「警察には事件化してもらいたかった」ジャニー喜多川氏性加害、被害者の悔しさ 犯罪成立ならどんな量刑だったのか

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(前編から続く)

   故・ジャニー喜多川氏による性加害は、SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)の外部専門家チームの調査によると、2015年ごろまで半世紀にわたって続いたとされる。ヒアリングで得た話の数だけでも、小学校低学年から高校1年まで計24件に上り、被害者は複数の証言では「少なく見積もっても数百人」だった。

   「極めて悪質な事件」と前検事総長が座長として指揮する調査で指摘され、スマイルアップの東山紀之社長(57)が「鬼畜の所業」「人類史上最も愚かな事件」と表現したほどおぞましいものだった。そんな事件も、警察や検察が立件しなかったが、本当は立件できたのか、関係者への取材から検証した。(後編)(J-CASTニュース編集部 野口博之)

  • SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)
    SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)
  • ジャニーズ性加害問題当事者の会代表の平本淳也さん
    ジャニーズ性加害問題当事者の会代表の平本淳也さん
  • 性加害問題をめぐる旧ジャニーズ事務所の会見(2023年9月7日撮影)
    性加害問題をめぐる旧ジャニーズ事務所の会見(2023年9月7日撮影)
  • SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)
  • ジャニーズ性加害問題当事者の会代表の平本淳也さん
  • 性加害問題をめぐる旧ジャニーズ事務所の会見(2023年9月7日撮影)

「中学1年で被害に遭い、警察に行こうと思っても行けなかった」

   ジャニー氏から性加害を受けたジャニーズJr.(現・ジュニア)の中には、結果として警察には行かなかったが、何度も行こうと思ったと明かすケースもあった。

   Jr.時代の被害を訴える東京都内の会社経営者男性(56)は、行こうと思っても行けなかった理由について、次のように取材に明かした。

「中学1年のときにJr.になり、当時は未成年でしたので、警察に行くと、親が呼ばれてしまいます。都内の合宿所では、午前10時には事務所からお迎えが来ますので、警察に朝早く行ったとしても、親が地方から来るには間に合いません。また、中学の授業が終わって、ジャニーさんの車で夜に来るので、地理的にどこか分からず、歩いたこともなく、警察の場所が分かりませんでした」

   合宿所は当時、億ションと言われた高級マンションで、出入りするにもガードマンに名前を言わないといけなかったという。

   警察に行かなかったもう1つの理由としては、次のようなことを挙げた。

「それでも、事務所の目を盗むスキはありましたが、警察に駆け込んだと聞けば、親が心配してしまうことがありました。親が芸能界に入るのを反対しており、その反対を押し切って合宿所に入りましたので、警察に行くと自分の夢が終わってしまうんですよ」

   中学生のときは若過ぎて分からなかったが、事務所が警察も押さえていると聞いたため、警察へ行っても取り合ってくれなかっただろうな、と今になっては思うという。

「この被害を耐えればタレントになれる、と皆が洗脳されていました。ジャニーさんは、『みんなやってることだから』が口癖でしたが、寝床に入ってくると、膝を丸めて力を入れ、必死に寝たふりをしました」

   中学3年になると、事務所へ行って職員に被害を訴えたが、「あなたは頭がおかしい」などと言われた。10年ほど前にも、思い直して電話で訴えたが、同じような対応だったという。

「連絡して来たらこのように対応する、というマニュアルができていたのでしょう。事務所から、被害を聞くために呼ばれることもありませんでした。せめて、警察には事件化してもらいたかったと思っています。そうしてくれていたら、かなりの数の被害をなくせたでしょうし、芸能界も劇的に変わったのではないでしょうか」
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