「大鵬部屋に入って本当に良かったなと思いました」
「その日、新潟市で講演の仕事があって、講演が終わってから私の店に来て下さったんですよ。これはいまだに忘れられないんですけども、大鵬親方がカウンターと全てのテーブルを回ってくれたんですよ。『うちの弟子がお世話になっております。これからも大翔龍をお願いします』と頭を下げて、お客様ひとりひとりに挨拶をしてくださいました。この時、大鵬部屋に入って本当に良かったなと思いました」
大鵬部屋は大鵬親方の定年退職に先立ち、大鵬親方の婿養子だった大嶽親方(元関脇貴闘力)が04年1月に部屋を継承し、大嶽部屋に名称が変更された。05年に65歳で日本相撲協会を定年退職し、13年1月に72歳で亡くなった。平井氏は大鵬部屋の名を残したいとの思いから店のメニューに「大鵬コース」を加え、今では看板メニューになっているという。
マゲを落としてから29年間、第2の人生を料理人として生きてきた平井氏は「この商売をやっていて1番良かったと思うのはお客様に喜んでいただいていることです。お客様に『おいしかったよ』と言ってもらえるためにどういう事をしたらよいのかを考える毎日です。今では相撲を辞めて自分がやってきたことが間違っていなかったと思えるようになりました。今ようやく認められてきたかなと感じています。まだこれが完成系かどうか分かりません。相撲でいえばようやく十両に上がれたという感じです」としみじみ語った。