2024年元日に発生した能登半島地震。震源となった能登半島にある石川県輪島市は、観光名所だった「輪島朝市」が大規模火災で焼失し、被害は甚大だ。
輪島市は、伝統工芸品「輪島漆器」(輪島塗とも)の産地としても知られる。大地震によって、今後が心配される。
「沈金」「蒔絵」という技法
輪島漆器は、漆器に金箔を押し込む「沈金」や金粉で絵をつける「蒔絵」という技法で知られる。石川県中小企業団体中央会の公式ウェブサイトによると、発祥は諸説あるが、今から約550年前、「1476年には輪島に塗師がいたことは明らかになっている」という。1977(昭和52)年4月25日、国の重要無形文化財に指定されたとの説明だ。
その技術は、食器や杯のほか、ボールペンや名刺入れといった実用を兼ねた商品にも応用される。学校の卒業時や企業の定年退職者への記念品としての需要が多い。また、近年は「ふるさと納税」の返礼品として、食器類が選ばれる機会もある。
地震後、輪島市内に多数存在する輪島漆器のメーカーの中には公式サイトを更新し、業務を停止していることを報告するところがある。J-CASTニュースBiz編集部は、東京都に本社を置き、関東地方の大学や自治体など法人向けに輪島塗の記念品の販売を行う「輪島漆器販売」に、地震の影響について話を聞いた。同社は輪島漆器の生産は行わず、販売のみを担当している。
「全く見通しが立たない」
広報によると、業務が通常のペースに戻る時期は「全く見通しが立たない」と答えた。
今年の3月の卒業シーズンは、例年なら輪島漆器の記念品の需要増が見込まれる。地震の影響をたずねると、在庫などで対応するため「特にない」と回答。一方、新年度以降のニーズが高まる時期については、同社では輪島塗以外に石川県加賀市で生産される「山中塗」の扱いがあると説明。仮にその時点で輪島漆器の生産見通しが厳しかったとしても、代替できるようだ。
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)