SLは「観光資源としてしか意味がない」
―― ローカル線の中には、台風や豪雨で不通になり、その復旧をめぐって存廃の議論に発展するケースがあります。SL人吉が走っていた肥薩線も、そのひとつです。非常に風光明媚な路線で、復旧すれば観光資源として魅力ですが、被災前から赤字で、仮に復旧したとしても持続可能性を疑問視する向きもあります。
石破: SLを走らせるにしても、本当にいくらかかるんだか分からないんですよね。ヨーロッパでもアメリカでも、SLを頑張って走らせているという話は、あまり聞きません。私たちが子どもの時は、ほとんど蒸気機関車が引いてましたけど、トンネルに入るたびに窓閉めるとか大変なことでしたよ。それはノスタルジーとしては意味があるけど、輸送機関としての意味は全くありません。
―― あるとすれば観光資源としての意味ですよね。
石破: 観光資源としてしか意味がない。それで採算が取れるんだったら、やったらどうぞ、ということですね。
―― 前原誠司衆院議員はSLが大変お好きですが、そういう感じでもいらっしゃらないのですか?
石破: あんまりそうでもない、いやー、言わんとしていることは分かるし、「C57きれいだったね」とか、それはそうなんですけど、前原さんみたいに執念を持って写真を撮影するより、私は客車に乗って酒を飲んでる方が好きだった、ということですね。
―― モータリゼーションの発達で鉄道に乗る人が減り衰退につながった、という見方もあります。
石破: それは間違いです。ヨーロッパの方が、モータリゼーションが日本より発達していますからね。ですが、モーダルシフト(交通・輸送手段の転換)というものを本当に徹底して考えているヨーロッパと、日本では、モーダルシフトという言葉だけはあるけれど、鉄道、車、飛行機、船など、それぞれの輸送特性を最大限に生かすためにはどうしたらいいだろう、という議論はあまり行われなかったですよね。
―― 例えば鉄道は大量輸送に向く、といった基本的な議論ですよね。
石破: これだけドライバーが足りない、高齢化が進む、CO2の問題がある、ということになると、やはり貨物輸送はもう少しJRに負わせる、ということは必然だと思います。