詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明氏がズバリ 社内データを不正に持ち出し情報流出させるのはこんな人【インタビュー】

最悪のケースでは、詐欺・犯罪集団の使う「闇の名簿」に...

多田氏 一般的に、個人情報を継続的に大量に持ち出すのは、「誰か」からの依頼があるケースが多いと考えられます。その「誰か」が「闇の名簿屋」と呼ばれる人や組織で、彼らのほうからお金に困っている人にアプローチします。
そして、依頼に応じて一度情報を持ち出してしまった人は、「闇の名簿屋」とかかわりができ、「次はこういう情報はないか」とまた声がかかることになり、大量の名簿流出につながってしまいます。こうして売られた「個人情報」は、犯罪者の間で流通する「闇の名簿」の元となるデータとなる可能性があります。

――「闇の名簿屋」がかかわる場合、高値で取引されるものなのでしょうか。

多田氏 これも一般論で言えば、名前や電話番号程度であれば、たいした金額にはならないと思われます。1件いくらではなく、全体でいくらという値付けがなされるようです。ところが、さまざまなデータを合わせ、名簿の精度を高める「名寄せ」と呼ばれる手法があります。このような組み合わせによって「価値」は高まります。あるいは、病院のカルテなどは家族構成や連絡先がわかるものなども。このような「闇の名簿」はいわゆる詐欺・犯罪の集団に売られていくわけです。たとえば、資産家の情報などは、「闇の名簿屋」から買い取っているのではないかと考えられています。

――恐ろしいですね。

多田氏 こうしたケースに発展していく可能性もあると考えると、やはり情報の扱い方について企業は、本当に深刻に考えなくてはいけません。いわゆる営業電話がかかってくる程度ならまだしも、名簿が漏れてしまった人の中に詐欺・犯罪などの被害者が出かねないからです。そういうことにまで思いを至らせることが大事だと思います。
いまの時代、悪意を持ったサイバー攻撃もあります。それについては、対策をしても脅威を防ぎきれない面もありますが、一方で、個人の不正にアクセスによる情報流出は人為的なものですから、チェック体制を強化するなどして、絶対に抑えなくてはならないものでしょう。

――ところで社内には、個人情報を持ち出しやすい立場にある人もいるのではないでしょうか。

多田氏 そうですね。わりと多いのは、信頼を置かれている人。たとえば、会社からお金を横領したり着服したりする事件でも、そういう人がかかわっていたりします。世代的にはミドル世代になるでしょうか。とくに長年、誰か一人に任せきりになってしまっているようなケースでは、「魔が差さない」ための対策を企業側はきちんととるべき。誘惑にかられ、情報(もお金も)を持ち出そうとしてしまう、その芽を早めに摘んでいくことが大切です。

―――なるほど。個人情報の流出が疑われるようなケースにおいて、個人への影響で考えられるものはありますか。

多田氏 個人情報が流出すると、たとえば不審な電話やダイレクトメールが急に来たり、増えたりすることが多いです。そういうときは疑ったほうがいいと思います。自衛策としてメールアドレスやパスワードの変更はもちろん、場合によっては電話番号の変更も検討したほうがいいでしょう。


【プロフィール】
多田 文明(ただ・ふみあき):詐欺・悪質商法ジャーナリスト(評論家・ルポライター)。取材活動として、街頭でのキャッチセールス等の勧誘先・現場等への潜入数は100か所以上にのぼる。多種多様な詐欺・悪質商法やその手口、詐欺師の心理術、マインドコントロールの手法などに精通し、テレビ・ラジオ出演、新聞・雑誌等の取材など多方面で活躍。著書に、『信じる者は、ダマされる。』(清談社Publico、2022年)ほか。

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