年越しといえば、やはり、「そば」。家族と楽しむもよし、1人でしっぽり食すのも一興というものだろう。そんななか今年は、「レトロ自販機」で買う「年越しそば」も、選択肢に加えてもいいのかもしれない?!
近年の昭和・平成レトロブームに後押しされるかたちで注目され続け、静かなブームともなっている「レトロ自販機」に、以前から注目し続けている芸能人がいる。
タレントの及川奈央さん(42)だ。
及川さんのYouTubeチャンネル「なおチャンネル」ではたびたび、食品を扱うレトロ自販機を取り上げている。及川さんが自ら訪ね、実際に買って食べている様子が、好評を博しているのだ。
そんなレトロ自販機。今、世の中では値上げが相次ぐが、その影響はここにもあるのだろうか。J-CASTニュースBiz編集部は、話題の「レトロ自販機」の魅力について及川さんに話を聞いた。
レトロ自販機で買う「年越しそば」というテーマを念頭に置いたインタビューだったが、話は「レトロ自販機」を取り巻く「物価高」、「物流業界の2024年問題」、「人手不足」などにも及んだ。
(聞き手・構成/J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)
群馬県と山口県のレトロ自販機で「うどん・そば」を買った!食べた!
前置きとして説明すると、レトロ自販機は複数の筐体がひとまとめに設置されるとともに、ちょっとした休憩所・飲食スペースが備えられており、「オートレストラン」と呼ばれている。かつては幹線道路沿いなどによくあり、長距離ドライバーの利用客が多かった。
編集部がまず及川さんに聞いたのは、今回のメインテーマである「うどん・そば」の自販機についてだ。
「うどん・そば」の自販機はかつて、日本国内で2社が製造していた。だが、すでにどちらも撤退。このため、現役で稼働しているこれらの筐体は「修理できなくなったら廃棄」という、綱渡りの状態で稼働を続けている。
――「うどん・そば」のレトロ自販機ですが、及川さんがこれまで行かれた場所には、必ず置かれていましたか。割合はどれぐらいだったのでしょうか?
及川奈央さん ほぼ100%、置いてあったかとかと思います。ハンバーガーやトーストの自販機は必ずあるというわけではないのですが、うどん・そばの自販機は鉄板ですね。
――鉄板ですか! 及川さんはうどん・そばの自販機でこれまで何回買って、召し上がっていらっしゃいますか。また、うどんやそばのつゆの地域ごとの違いはありますか。
及川さん 2022年8月に群馬県の「オレンジハット」できつねうどんを1食。あと、今年(2023年)の9月に山口県岩国市の「欽明館」できつねうどんを1食、てんぷらそばを1食。なので、計3回ですね。
2か所しか食べていないのに、地域ごとの違いを言うのもちょっとおこがましいですが(笑)、印象としては、たしかに群馬県は東日本ということで濃い味、山口県は西日本ということで薄味の出汁でした。
――及川さんは濃い味、薄味のどちらがお好きでしょうか。また、麺は固め、柔らかめのどちら?
及川さん 私は広島県出身なので、やはり薄味の出汁が好きです。実際、山口県の「欽明館」は広島県の隣の県にありますから、出汁にも地理的な近さを感じました。あと、麺ですが......私は固いほうが好きです!
――2021年4月、及川さんはレトロ自販機めぐり第1弾の動画を出されています。鉄板とおっしゃっていた「うどん・そば」は1年後ですから、デビューは遅いんですね。
及川さん そうなんですよ......。というのも、私、実はエビとカニのアレルギーなので、海老天やエビのかき揚げが入っているうどん・そばは食べられなくて......。各所で確認してみるんですが、なかなかエビが入っていないものに出会えなかったんです。なので、きつねうどんにめぐり会った「オレンジハット」がうどん・そば自販機デビューでした。
――そうだったんですね!
及川さん それから、欽明館で食べた際のエピソードですが、天ぷらそばの方は、実は、そばのかき揚げにエビが少しだけ入っていたかもしれなくて......。見た目では分からず少し食べたのですがエビらしきものが少し入っているかもしれないと思い、私は麺をメインに食べ、かき揚げは一緒に行った友人がほとんど食べました。
――なるほど、たしかにそれでは、うかつには食べられないですね。
レトロ自販機に値上げの波は?
昨今、世の中はどの業界にも値上げの波が押し寄せている。食品値上げラッシュが怒涛のように押し寄せたのも周知のとおりだろう。となると、レトロ自販機の商品も例外ではないのだろうか。
――昨今の物価高で、うどん・そばなどの自販機で価格の変動を確認されたことはありますか。もしくは、「値上がりした」という情報を耳にされたことはあるでしょうか。
及川さん それがですね、あくまで私が見聞きした範囲の話では、レトロ自販機の値上げはいまのところあまりなさそうです。(※編集部注)
――そうなんですね!
及川さん これまでに延べ13か所を訪問していますが、今年9月に行った、さきほどの「欽明館」で言うと、レトロ自販機めぐりを始めた2年前の2021年4月頃の価格帯のままでした(1杯250円~300円前後)。ちなみに、全国的にこれくらいの価格帯だと感じています。
――それにしても、安いですね!
及川さん うどん・そば以外では、広島県の「本覚寺 みょうけんバーガー自販機」を何度か訪問しています。こちらのハンバーガーもやはり、レトロ自販機めぐりを始めた当初の価格帯くらいでしたよ(1個300~350円前後)。私が行くときは、毎回違うものを食べています。値段はどの商品も一通りチェックしています。
――まさに、庶民の味方ですね。
及川さん いや、本当にそうなんですよ! というのも、レトロ自販機で売られている食べ物って、場所によっては遠方から来る長距離トラックのドライバーさんだけではなく、地元の方が日常的に利用するところもあるんです。そういう場合、地域の人々の昼ご飯になっていたりもします。安い価格帯のままで、本当にすごいことだと思います。
(※編集部注:編集部が調べたところ、群馬県にある「丸美屋自動販売機コーナー」は2023年7月、うどん・そばの価格を約30年ぶりに見直し、250円から300円に値上げしている。)
レトロ自販機置き場は「人手不足」を解消するか?
――ところで正直な話、及川さんってもはや、「レトロ自販機」の評論家じゃないですかね?
及川さん いやいや、私などまだとてもとても! まだ行けていない地域がたくさんありますからね。
――たとえば?
及川さん まず、北海道には行っていません。あと、東北も。さらに、長野県や新潟県も。あと......そう! 岐阜には「岐阜レトロミュージアム」というレトロ自販機を展示している博物館があるんですが、そこにも行けていないので、ぜひ行ってみたいと思います。
――そもそも及川さんが、レトロ自販機を「なおチャンネル」で扱うことを思い立ったきっかけは何でしょうか。
及川さん 単純に私が興味を持っていたというのはあるんですが、「なおチャンネル」の第1回が「1000円ガチャの自販機」を特集していて、その反響がすごくて。それから、「自動販売機」は数字を持っているのではないか、と思うようになったという点も大きいですね。
――マーケティング的な視点だったのですね!
及川さん ただ、レトロ自販機に関しては、今後、減ることはあれども、増えることはないでしょうから、いま営業しているところに出来るだけ長く営業してほしいと思っています。
私、知人にトラック運転手がいるんですが、その人の話を聞いていると、やはり仕事がきついと言っています。そういう人たちにとって憩いの場所となっているのが、レトロ自販機を備えたオートレストランなんですね。こういうレトロ自販機は、残ってほしいと思います。とくに、夜中に食事付きで休めるのは貴重ですし。あと、コンビニに比べて駐車場が大きいのもいいと言っていました。
――トラックの運転手といえば、2024年から時間外労働の総量が年間960時間以内でなければならなくなるということで、今、「2024年問題」が話題になっていますね。時間外労働がきちんと規制されるとなった場合、ドライバーのみなさんにきちんと休憩時間が発生するわけですから......オートレストランの利用客が増えるといいですね!
及川さん たしかに! その展開には正直期待してしまいます!
――オートレストランとコンビニの比較の話をしているうちに思ったんですが、オートレストランは「無人で営業できる」という点が、昨今の人手不足の時代を先取りしていたように感じませんか?
及川さん たしかに! そういう側面は確実にありますよね。
――いま、高速道路のサービスエリアに「無人コンビニ」がありますが、あれって絶対、「オートレストラン」がそのはしりにありますよね。
及川さん そうですよね! そう考えると、今後、無人コンビニが増えていくでしょうから、新時代の、それこそ今までにない食品自販機が作られるかもしれませんね!
――それでは、最後にお聞きます。今後、及川さんはレトロ自販機めぐりを続けられるんでしょうか?
及川さん もちろんです! さきほども触れましたが、まだ行けていないレトロ自販機置き場には行ってみたいと思っています。47都道府県を制覇したら、また取材してくださいね!