住宅性能の「可視化」が進み、よりコスパが意識されるように
さらに、今後大きな要素としてクローズアップされるのが、「住宅の省エネ・断熱性能」に関わる件です。2025年4月の省エネ基準適合義務化に先駆けて、その1年前にあたる2024年4月から、省エネ性能表示制度がスタートします。
この制度では、表示ラベルでエネルギー消費等級と断熱等級、年間の光熱費の目安が記載されることになっています(第三者評価/自己評価/住棟・住戸の別などで表示内容に違いがあります)。それにより、住宅性能が一気に「可視化」されることになります。物件本体の価格(イニシャルコスト)とともに、光熱費(ランニングコスト)がわかるようになれば、トータルでのコスパが強く意識されるようになるのは当然のことと思われます。
したがって、住み替えについては、物件の立地条件、交通条件、周辺環境、安全性、居住快適性などに加えて、省エネ・断熱性にも意識が向くようになります。ですから、たとえば立地条件などが良好でも、これからは省エネ・断熱性能に劣る住宅は資産性が下がってしまうことが考えられるのです。
2024年の中古住宅流通市場では、2025年4月から施行される「改正建築物省エネ法」に基づき、全ての新築建築物に、省エネ基準適合(断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上)が義務化されます。
中古住宅においても、流動性を高めるためには耐震改修だけでなく、断熱改修も必要になるケースが増えることをイメージしておく必要があるでしょう。
【筆者プロフィール】
中山 登志朗(なかやま・としあき):LIFULL HOME'S総研 副所長・チーフアナリスト。出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。2014年9月から現職。