高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「マイナンバーカードを落としたら大変」は思い込み...紙の保険証廃止でも、混乱は起きないだろう

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   マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」への移行をめぐり、政府は現行の保険証を2024年12月2日で廃止する政令を閣議決定した。以降、新規発行はできなくなる。

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マイナンバーカードと保険証があれば、「マイナ保険証」とするのは簡単

   現時点でマイナンバーカードはどの程度保有されているのか。総務省によれば、2023年11月末現在で国民1億2542万人に対し9709万枚交付され、9136万枚保有されているので、保有率72.7%だ。男71.4%、女73.9%で、女性の方が保有率が高い。一般的に高齢者のほうが保有率が高く、平均より高いのは15-19歳、50-79歳だ。

   また、デジタル庁によれば、マイナンバーカードと保険証を紐付けているのは73.8%になる。

   一方、厚生労働省によれば、11月のマイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用率は4.33%だった。この数字は7カ月連続の低下だ。

   マイナンバーカードを持っていて、保険証もあれば、スマホで紐付けして「マイナ保険証」とするのは簡単だ。筆者はかなり前からマイナ保険証を使っているが、マイナ保険証を読み取り機にかざすだけで便利だ。また、顔写真がなくICチップもない保険証を持ち歩いて紛失したときのリスクと顔写真とICチップのあるマイナ保険証を紛失したときのリスクは、前者の保険証のほうが大きいので、筆者はマイナ保険証を持ち歩いている。

危ない保険証を持ち歩くより、マイナ保険証を持ち歩いたほうがいい

   ただし、マイナ保険証の利用率をみると、筆者は例外らしい。実際、筆者の行く病院では、多くの人がマイナ保険証ではなく、保険証を窓口に提示している。マイナンバーは持っており、保険証との紐付けも済んでいるが、マイナンバーカードを持ち歩かず家において、保険証を持ち歩き、病院窓口で提示しているのだろう。

   これはリスク管理の観点から見れば、かなり非合理だが、マイナンバーカードを落としたら個人情報が漏れて大変だという思い込みだろう。

   ICチップの中に個人情報が満載と思っている人も多いが、実は、カード面に記載されている情報(氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・本人の写真など)や公的個人認証の電子証明書だけだ。落としたら、クレジットカードと同じように、コールセンターへ電話して一時停止するだけだ。

   保険証を紛失したら、最寄りの警察署への紛失届を出さなくてはならない。顔写真やICチップのない保険証は悪用されやすく、勝手に医療費が使われたり、身に覚えのないローンが組まれていたりということもある。こんな危ない保険証を持ち歩くより、マイナ保険証を持ち歩いたほうがいい。国民がこれをわかれば、マイナ保険証の保有率は高いので、混乱は起きないだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「マスコミと官僚の小ウソが日本を滅ぼす」(産経新聞出版)など。


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