フィリピンメディア「GMA NEWS」(WEB版)が2023年12月27日、プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、30)の特集記事を組み、井上が4団体王座統一戦で弱点を露呈したと指摘した。
井上は12月26日に東京・有明アリーナでWBA・IBF同級王者マーロン・タパレス(フィリピン、31)と対戦し10回KO勝利。バンタム級に続いて2階級で4団体王座統一を達成した。
試合は序盤から優勢に進めた井上が4回にダウンを奪い、その後も強烈なパンチでタパレスを徐々に追い詰めた。タパレスのダメージが蓄積し疲労の色が濃くなった10回、井上の右でダウンすると、立ち上がることができずに試合終了となった。スポーツ紙の報道によると、タパレスは試合後の会見で「井上のスピードに驚いた」とコメントしたという。
「タパレスは井上が実際に倒せる選手であることを証明した」
タパレス敗戦を複数の地元メディアが速報する中で、GMA NEWSは「マーロン・タパレスは敗れたものの井上の弱点を暴いたとアナリストは言う」とのタイトルで記事を展開。ボクシング・アナリストのエド・トレンティーノ氏が王座統一戦を独自の視点で分析し、タパレスの健闘ぶりに言及した。
記事によると、トレンティーノ氏は「タパレスは井上に対して番狂わせを起こすことができなかったが、日本のスターの弱点の一部を明らかにすることに成功した」と指摘したという。そして「タパレスは井上が実際に倒せる選手であることを証明した」との見解を示した。
タパレスは序盤、重心をやや後ろに置き、ガードを固めて井上の出方を伺った。4回にダウンを喫するも右アッパーや左右フックが井上の顔面にヒットする場面もみられた。最後はダメージの蓄積により力尽きたが、持てる力を全て発揮した。
「井上はイライラしながらもパンチを出し続けた」
トレンティーノ氏は「タパレスの足の間隔が広く、井上は不自由を感じていた」とし、「井上は足を踏ん張ってフルパワーで戦うことができなかった。序盤は苦戦を強いられた。井上はイライラしながらもパンチを出し続けた」と語り、井上の「弱点」について言及した。
「タパレスがもう少し攻勢に出さえすれば、いい作戦だった。井上が混乱して隙が生まれた場面があった。他のボクサーが見ていれば、井上の弱点はすでに見えている。彼らはタパレスが見せたものをメモしているかもしれない。タパレスはしっかり下調べをしていた。井上は間違いなくボクシング界のパウンド・フォー・パウンド・キングだが、ある意味タパレスが井上の正体を暴いたのだ」
世界4団体王座統一に成功した井上の次戦は、元世界2階級制覇で現在WBC世界スーパーバンタム級1位ルイス・ネリ(メキシコ、29)が有力で、24年5月に日本で開催される可能性がある。