硬球が当たってできた痛々しいアザも
メモだけでなく、愛由美さんは練習でもサポートを見せた。バッティングの様子を動画に収め、気になる点を挙げアドバイス。全くの未経験ながらインターネットで打ち方を学び、守備練習のノックも愛由美さんが担当した。
「できるだけ同じ経験をしようと思って。ノックもできる限り頑張って打ったり、バッティングも一緒に見て『ああじゃないか、こうじゃないか』って。一心同体で頑張れるっていう意味ではいいのかな。私なりの支え方なのかなと思います」と語った。
2人は中山さんの実家に同居し、トライアウトまでの日々を過ごしたという。
坂道での走り込みやストレッチなどのトレーニングも2人で行い、愛由美さんの腕には硬球が当たりできたという痛々しいアザもあった。愛由美さんは「痛いなぁと思ったらアザになってて。でも頑張ってる証だな」と笑顔を見せた。
合同トライアウトで中山さんは見事本塁打を放ち、愛由美さんは声をあげて喜んだ。
試合終了後、スタンドから「中山さーん!」「いいぞー中山! 戻ってこい!」とエールを送るファンの声を聞いた愛由美さんが涙を流す姿もあった。
トライアウト後どこからも連絡が来ない日々が続く中、2人は「時間が経つのが遅いなぁ」「まだ来ないのかな」などと不安な胸中を覗かせた。
熊本のアパートを引き払う準備を進める中、とうとう中山さんの電話が鳴った。24年から2軍に参入する「オイシックス新潟アルビレックスBC」からのオファーだった。
「ぜひうちでプレーしてくださいってことだったんで」と伝えた中山さんに、愛由美さんは笑顔を堪えきれない様子で「新潟? 寒い?」。夫婦でグータッチを交わし喜びを分かち合った。