山陰には「人がいなくて仕事にならない」
日本銀行松江支店が2023年12月6日に発表した「深刻化する山陰の人手不足の現状と今後に向けた取り組み」と題されたリポートには、課題に直面する鳥取県と島根県の状況を解説している。
驚くのは、山陰地方の有効求人倍率の高さだ。2014年から1倍を超え、コロナ禍から現在にかけても大幅な受給超過となっている。2023年8月時点では1.45倍と、全国平均の1.29倍を大きく上回る状態だ。
一般事務員の0.5倍、製造技術者の0.7倍など倍率の低い職種がある一方で、建設躯(く)体工事の11.7倍、採掘の9.9倍、自衛官・警察以外の保安の8.9倍、建築・土木技術者等の8.8倍、土木の7.7倍などは非常に高い。
「山陰には仕事がない」のではなく「山陰には人がいなくて仕事にならない」状態なのだ。
リポートは「もはや人手不足は一企業の問題にとどまらず、山陰経済全体の重大なボトルネックになりつつある」と指摘し、「人手不足関連倒産が増える」ことも想定している。
要因は、総人口の減少と高齢化の進展があいまった「労働力人口の減少」だ。特に10代後半から20代の若年層は、出生率の減少に加え、進学・就職時の県外流出に歯止めがかからず、2022年度の高卒者の求人倍率は4倍を上回る。
よくある「女性労働力の活用」はすでに取り組まれており、近年では北欧並みの水準に達している。高齢者の労働力率も全国を上回る水準で、人手不足解消の切り札にはなりえない。