小中学生が自分専用のスマホを持った時、親は何かと心配なものだが、しっかり管理しているだろうか。
NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2023年12月22日に発表した調査「スマホを持たせる時、ペアレンタル・コントロール・サービスを利用していますか」によると、小学生で7割以上、中学生で約6割の親が管理のために同サービスを利用しているが、悩みと不安は尽きない。調査担当者に聞くと――。
18歳未満には「管理サービス」利用が義務だが...
「ペアレンタル・コントロール・サービス」とは、親として、子どものスマホの利用方法を管理する機能のこと。たとえば、利用時間の制限、子どもにとって有害なサイトや動画の閲覧制限、アプリのダウンロード制限といったことを、親の端末で設定することができる。
暴力や残酷な表現が含まれる映像、アダルトサイト、パスワードやクレジットカード情報が盗まれる恐れのあるフィッシングサイトなどから子どもを守るために、2018年2月に施行された「青少年インターネット環境整備法」により、18歳未満の子どもが携帯回線を契約する際に、保護者は「ペアレンタル・コントロール・サービス」を利用するよう義務付けられた。
J‐CASTニュースBiz編集部では、小中学生の子どもを持つ複数の親に、サービスを利用しているかどうか話を聞いた。
小学6年の男子を持つ40代父親「もちろんつけている。時間制限とアプリを勝手にダウンロード出来ないようにするだけ。息子は特に気にしていない。高校生になったら外そうと思っている」
小学5年の女子を持つ40代母親「子どもはスマホを欲しがっていますが、私はまだ早いと思ってキッズケータイです。決められた4人(私、夫、私の父母)としかやりとりができなくなっています。
先日、保護者会でお母さん方とその話題になり、クラスの半分はスマホを持っているようですが、サービスを利用している人、何もコントロールしていないが、LINEの内容など毎日チェックしている人、LINE専用のスマホを使わせている人など、さまざまでした。
LINEですでにトラブルも起きているようで、遅かれ早かれ通る道だし、失敗しながらリテラシーを付けないと後々大変...という考え方が多いです。学校でiPadが支給されているので、その時点でスマホも同じだよね、と言っている人もいました」
危ない年頃の中学生に、むしろ「管理」が緩くなる理由
さて、モバイル社会研究所の調査(2022年11月)は、小中学生とその親600人が対象。サービスを利用しているかどうかを聞くと、小学生では75%、中学生だと58%が利用していた。中学生の17%は、契約時(初めてスマホを購入した時)には契約したが、その後利用しなくなった。
興味深いのは、サービスの実施率を2018年から2022年までの4年間の推移で見ると、小学生は64%から75%に約1割増加したのに対し、中学生は逆に67%から58%に約1割減少したことだ【図表1】。
アダルトサイトや出会い系サイトなど、危険なアプリに接する機会が多くなる中学生になぜ管理が緩くなるのだろうか。
サービスの実施内容を聞くと、「閲覧内容のフィルタリング」が学年問わず、90%近くになった。次いで「コンテンツの購入、ダウンロード制限」「端末の利用時間の制限」と続いた。全体的に小学生のほうが親の管理が厳しい【図表2】。
ところで、18歳未満の子どもがスマホを購入する際、原則ペアレンタル・コントロール・サービスの加入が義務化されているが、サービスを設定できない親がかなりいることがわかった。【図表3】は、サービスが設定できる親と、設定できない親を比較したグラフだが、どのサービスも設定できない親が42%もいた。
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の水野一成さんに話を聞いた。
――ペアレンタル・コントロール・サービスの利用で、4年前(2018年)に比べ、小学生が10ポイントも増えているのに、中学生が逆に約10ポイントも減っているのはなぜでしょうか。
中学生のほうが、ゲームとか、いかがわしいアプリとか、一番心配な年代なのに理解できません。反抗期の子に遠慮しているのか、無関心なのか、親として無責任な気がします。
水野一成さん スマホの所有開始年齢の低年齢化が関連している可能性があります。低年齢化に伴い、今の中学生は小学生からスマホの利用をしている子が増えました。特に小学生の高学年はより利活用が増えています。
このことから、一定数の中学生はスマホの利活用経験者が4年前に比べて多くなっており、「スマホ利用に慣れた」中学生が増えたため、ペアレンタル・コントロールの率が減っていることも一因ではないか、と推察しています。
親の心配トップ3...「健康」「依存症」「友人とトラブル」
――なるほど。閲覧内容のフィルタリングが9割近くに達していますが、具体的にはどういう内容を閲覧禁止にする例が多いのでしょうか。
水野さん 具体的な内容については調査したことはありませんが、今年(2023年)9月に親が子にスマホの使い方を教える時に、最も不安に思うことを聞いた調査では、トップは「悪質サイト・アプリの見分け方」でした。
次に多いのが「QRコード決済や課金・ネット購入などお金の使い方」です。そうした不安が高い閲覧内容のフィルタリングに繋がっているのではないかと推測いたします。
ちなみに、当研究所がまとめた「2023年版モバイル社会白書」では、小中学生の親が子どものスマホ利用に関して抱く不安のトップ3は、「長時間利用による健康への悪影響」「常に視聴を優先するスマホ依存」「LINE、メールなどの投稿内容から友人とトラブルになること」です。
――ところで、ペアレンタル・コントロール・サービスの設定が義務付けられているのに、設定できない(あるいは、しない)親が4割もいることが不思議です。どういう親なのでしょうか。子どもの言いなりになっている、あるいは無関心な親なのでしょうか。
水野さん いくつかのパターンが存在すると思われます。一概に、子どもの言いなりになっている、または無関心ということではないと考えております。
(1)小学生、特に低学年中心にスマホを所有させているが、実際には家内利用で、利用の際にも親が見ている中での限定利用。(2)スマホ操作に疎くて、設定のしかたが分からない。(3)子どもがある程度自身でコントロールできるようになったので、子どもに任せている、などの理由があるかと思われます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)