2024年1月から「新NISA」(少額投資非課税制度)がスタートする。
投資資金の非課税枠が大幅に拡大するなど、期待が高まる一方、ネット上では毎月定額の積立投資をした時と、一括で投資をした時のどちらがお得か、大議論になっている。
そんななか、「議論に終止符を打つ!」として「一括投資」に軍配を上げた研究リポートが発表された。分析を行なった株式専門家に聞いた。
S&P500に1月一括投資で、24年後に5.6倍に
この研究リポートは、ニッセイ基礎研究所主席研究員の井出真吾さんが2023年12月11日に発表した「新NISA、『毎月投資』か『1月一括投資』か ~『オルカンvs S&P500論争』にも終止符を打つ~」という分析報告だ。
新NISA投資法をめぐっては、「毎月定額積立投資」と「一括投資」のどちらが得かという議論のほかに、もう1つの議論も盛り上がっている。投資対象として米国の主要500銘柄である「S&P500」と、米国以外に中国、欧州なども含めた全世界株式(オールカントリー、略して『オルカン』=三菱UFJアセットマネジメントの登録商標)のどちらがおススメかという議論だ。
そこで井出さんは、この2つの議論の双方に決着を試みた。2000年1月から2023年11月までの約24年間の株式変動データを元に、年間投資額12万円を「日本株」(TOPIX)、「米国株」(S&P500)、「オルカン」(MSCI-ACWI)に「1月に一括投資」した場合と、「毎月1万円積立投資」した場合の資産総額を比較した。
【図表1】がその結果だ。結果は「S&P500に1月一括投資」が最も有利で、投資元本287万円が1603万円に増えた(5.59倍、年平均利回り7.5%)。一方、「S&P500毎月投資」は1476万円だった(5.14倍、同7.1%)。オルカン(MSCI-ACWI)、TOPIXも結果は同様で、「1月一括投資」のほうが有利な結果となった。
つまり、同じ12万円(年)を投資するなら、毎月1万円を積み立てるより、1月にドーンと、それも「S&P500」に投入するのが一番お得だったということだ。
ところで、「毎月投資」有利派の中には、「ドルコスト平均法を実践する積立投資は、一括投資よりもリスクが少なく有利」という意見が根強くある。
「ドルコスト平均法」(定時定額購入)とは、価格が変動する金融商品を定期的に定額で積み立てる手法。自動的に定額で買うから、対象の価格が安い時には多く買い、高い時には少なく買うことになる。積立期間が長くなるほど購入価格が平均化され、リスクに強い投資となるといわれる。
しかし、検証結果は真逆になった。リポートでは、その理由は【図表2】のグラフで示したように、「S&P500」と「オルカン」ともに株価指数が24年間の多くで右肩上がりだったため、と説明する。1月に一括投資したほうがその後の株価上昇の恩恵がより大きく受けるわけだ。
もちろん、こうした分析は過去の結果を元にしている。将来は不確実性が伴う。井出さんは、今後も長期的にはリスク・リターンともS&P500のほうが、オルカンよりも少し高くなると想定しているが、オルカンの約6割は米国株でもある。米国株の「一本足打法」は危険だと考えている人は、オルカンを買えば投資資金の約6割が米国株だし、残りは世界中に分散投資できるとアドバイスする。
リポートの最後に井出さんは、「要は好み(リスク選好)の問題だ。短期的な値動きに目を奪われることなく、時代の大きな流れに応じて投資先を決めることが肝要だ」と結んでいる。