テスラを猛追「BYD」、SHEINしのぐ激安「Temu」... 2023年に日本上陸した注目の中国ブランド4選

メッシが躍動する垂れ幕「COTTI COFFEE」

(3)COTTI COFFEE:アルゼンチン代表推しの中華カフェ

   ガチ中華が集積する池袋エリアで異彩を放つのが、ビル外壁にサッカーアルゼンチン代表選手の巨大な垂れ幕を掲げたカフェ「COTTI COFFEE(コティコーヒー)」。同ブランドは今年中国で大きな話題になった新興カフェチェーンだ。7月に日本法人を設立し、8月に東京大学近くにフランチャイズ形式で1号店をオープン。池袋は日本法人のオフィスも兼ねた直営店だという。

   COTTI COFFEEが中国で注目されている最大の理由は、その"出自"にある。同社は中国最大のカフェチェーン「luckin coffee(ラッキンコーヒー)」を不祥事で追放された創業者らが、リベンジを期して興したスタートアップ。昨年10月に福建省に1号店をオープンし、今年8月末には5000店舗を達成した。1999年に中国に参入したスターバックスが6480店(今年6月末時点)、luckin coffeeが1万店舗強であることを考えると、何かとスケールが違う中国でも、COTTI COFFEEの出店の勢いが普通でないとわかるだろう。

   一押し商品は中国で定番化している「ココナッツラテ」。本社がアルゼンチン代表のグローバルスポンサーにも就いたことから、日本の店舗もアルゼンチン推しを貫き、同代表のユニフォームカラーにちなんだ青いラテを販売している。

   COTTI COFFEEの日本法人によると、フランチャイズ形式での拡大を目指しており、年内に30店舗を構える計画だという。12月18日には高田馬場に新店がオープンしたが、そこは今年夏に「MIXUE高田馬場店」としてオープンした店だった......。今後はこうした鞍替えも活発化しそうだ。

ユニフォームの青をイメージしたラテ商品
ユニフォームの青をイメージしたラテ商品
アルゼンチン代表の広告が目を引くCOTTI COFFEE池袋店
アルゼンチン代表の広告が目を引くCOTTI COFFEE池袋店

(4)Temu:SHEIN、アマゾンを脅かす激安EC

   MIXUEとCOTTI COFFEEは東京と大阪にしか出店しておらず、BYDのEVも簡単に買えるものではない。日本人消費者にとって最も身近な中国ブランドは、今年7月に日本に上陸した越境EC「Temu(ティーム―)」かもしれない。

   Temuは中国の新興EC「拼多多(ピンドゥドゥ)」が立ち上げた海外消費者向けの越境ECで、昨年9月に米国進出したのを皮切りに、既に50か国近くで展開している。2022年に日本に進出した中国発アパレルEC「SHEIN」が大人気になったことから、Temuの動向にも注目が集まっている。

   Temuの最大の売りは安さだ。「激安」と言われるSHEINよりさらに安く、SHEINだけでなくアマゾンのライバルになるとも言われている。

   ただ、同ブランドが注力しているのはEC大国のアメリカや、伸びしろが期待できる東南アジア市場で、現時点では日本は重要市場というわけでもないらしい。日本はアプリがローンチして5か月が経つが、テストマーケティング的な運営が続いている。2024年に動きが出るのか注目される。

Temuのアプリ、激安商品が並ぶ
Temuのアプリ、激安商品が並ぶ

【筆者プロフィール】

浦上早苗:経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。新聞記者、中国に国費博士留学、中国での大学教員を経て現職。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。

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