家電量販店などでは、高額なスマートフォン(スマホ)をキャンペーンで、最初の負担を「1円」のような超低価格にするサービスを提供してきた。こうした「1円スマホ」が、2023年12月27日の法改正によって終了する。総務省によれば、その後の値引きの上限は4万円程度になる。
超格安での販売が出来なくなると、販売店側は旧モデルの端末の在庫をどうやって効率的にさばいていくのか。J-CASTニュースBiz編集部は、調査会社MM総研に取材した。
iPhoneも1円、駆け込み需要を予測
総務省が2023年11月7日に出した「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」では、スマホの販売について、「納得感のある料金・良質なサービスの実現」、「事業者間の乗換えの円滑化の加速」、「事業者間の公正な競争環境の整備の促進」の3つの柱が示されている。また、「過度な端末割引競争を抑制し、通信料金・サービス競争へのシフトを加速させることが重要」とある。
「1円スマホ」販売終了の前週、J-CASTニュースBiz編集部は、東京都内にある大型家電量販店各店のスマホコーナーを訪れた。ある店では、スマホ購入を検討している人に向けて、急ぐよう促すのぼりが立っていた。販売員は、「26日までに駆け込み需要もあるでしょう」と予測していた。
他社からの乗り換えで「1円スマホ」として販売されていた機種には、「iPhone 14」が含まれていた。1円ではないが、それでも100円以下の激安スマホに、他メーカーの最新機種がみられた。
ルールと業者の「いたちごっこ」
MM総研ネットワーク研究グループの横田英明氏に、「1円スマホ」の背景を聞いた。もともと、「ガラケー」全盛期から1円端末という概念はあったという。
「販売店の戦略や在庫処分などが目的です。また、1円端末を話題にした集客もあったようです。消費者には、スマホの高機能化による価格の高騰を背景にして、格安の1円端末を求める需要があります」
横田氏は、1円スマホがなくなることによる駆け込み需要が増えるとみる。その後、一次的に端末価格が上昇することで、12月27日以降のスマホへのニーズの冷え込みを懸念する。ただ、これまでも通信業界はルールと業者の「いたちごっこ」があり、1円スマホと似たような値引き販売が行われる可能性はあると指摘した。
「スマホは、次のモデルが出れば前機種の価値はおのずと低下する『賞味期限が短い』商品です。在庫となった端末が1円端末として扱えなくなれば処分するのが難しくなりますし、端末処分をする際の『エコ的観点』からもルール変更が必要になるでしょう。私が考える具体案は、スマホの発売開始からの期間に応じて値引き額を上げる、もしくは値引き額の制限をなくす処置です。個人的には2年以上たった端末は、1円での販売の対象にしても良いのではないかと考えています」