郵便料金の大幅値上げが、現実味を帯びてきた。25グラム以下の定形の郵便封書は現在の84円から110円、50グラム以下は94円から110円に統一する。はがきは、現在の63円から85円にする。総務省は2023年12月18日、この案を情報通信行政・郵政行政審議会に諮問した。
値上げのニュースに、インターネット上ではさまざまな意見が出た。その中には、郵便が全国一律の料金で配達されている「ユニバーサルサービス制度」に対する疑問の声も上がっている。
法律で決まっている
「ユニバーサルサービス制度」を維持する限り、地続きで短距離の配送であっても、はるか遠くの離島への配送であっても郵便料金は同じであることを意味する。
今回の郵便料金値上げ報道に対して、ネット上では、最近の郵便物の配達が遅いとの不満や、メール・メッセンジャーアプリで代用しており「不要」という指摘もあった。こうなると、遠隔地や不便な場所への配達でも他地域と同料金にするため、利用者全員で負担を分かち合うユニバーサルサービス自体、もはや維持できなくなってきているのではと疑問の声も上がった。
ただ同制度は、2007年に施行された郵政民営化法などによって定められており、法改正なしに廃止できない。
J-CASTニュースBizは、ユニバーサルサービス制度が維持されている理由を、郵便学者の内藤陽介氏に取材した。
「営利事業の場合、採算性の見込めない過疎地へのサービスは無視することもやむを得ない面がありますが、公共サービスの場合は、どんな過疎地であろうとも、そこに国民が住んでいる限り、生活のための最低限のインフラを提供する必要があります」
と述べた。
「郵便に何を求めるかで変わってくる」
それでも配達の速度や料金への不満は根強い。内藤氏は、特に封書は30年ぶりの値上げである点を指摘。上げ幅の妥当性は置くとしても、「郵便事業は人件費の比率が高いので、昨今の人件費の高騰を考えれば値上げはやむを得ない」と考える。
一方で、郵便事業において何らかのコスト削減はできるのか。内藤氏は「消印を省略すれば、それなりのコストカットは可能」とした。現行の消印を廃止し、英国やドイツで導入されているバーコードの電子データを印刷した切手を導入すれば、相当な省力化、経費節減が実現できそうだ。
ただ内藤氏は、料金に対する不満は「郵便に何を求めるかで変わってくる」とも。結婚式の電報など儀礼的なものに関しては、「物体を送るサービス」として今後も続いていくだろうと予想。「送るものによって郵便以外のサービスと使い分けていくしかない」としつつ、「手紙という文化がなくなることはないのではないか」と話した。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)