同じ悲劇を繰り返さないで欲しい
アンケートには開発部門の組織風土として「『失敗してもいいからチャレンジしよ』でスタートしても、失敗したら怒られる」と嘆く回答もあったという。
ダイハツ経営幹部の問題について、短期開発を「ダイハツらしさ」と捉えて他社との差別化要因とする経営方針を採用する一方で、組織内の歪みや弊害について敏感に察知するリスク感度が鈍かったと指摘する。
自動車メーカーとして致命的な問題を容赦なくえぐり出す報告書だが、末尾は温かい励ましの言葉で締めくくっている。
「前途は多難であるものの、当委員会は、ダイハツの将来を悲観してはいない。調査の過程で当委員会が接した従業員は総じて真面目であり、改善の方向性され間違えなければ必ず信頼を回復することができると期待している。今回の問題を乗り越えて新たな『ダイハツらしさ』を獲得することを切に願って当委員会の報告を終える」
働き方改革総合研究所の新田龍氏は、この報告書を読み「ブラック企業出身者として、過去のいろんな思い出がフラッシュバックして胸が痛かった」と明かし、同じ悲劇を繰り返さないで欲しいと語った。
「おそらく我が国の企業に勤める多くのビジネスパーソンが、報告書を読んで『これウチのことじゃん...』と感じたのではないでしょうか。これは決してダイハツだけの問題ではありません。現場の従業員の皆さんがどれだけ真摯に仕事に取り組んでいても、職場の風土次第では、不正を正当化せざるを得ない状況に追い込まれてしまうこともあるのです。だからこそ経営陣には、従業員一人ひとりの力が真っ当に発揮され、きちんと報われる職場環境を整えることが重要な役割だと自覚していただきたいと考えます」