ディズニーのシンボル的なキャラクター「ミッキーマウス」の初期映画の著作権が2023年末で切れると、本国に当たる米国の通信社などが報じ、日本でも2次創作ができるようになるのか関心を集めている。
児童文学「クマのプーさん」(1926年)の著作権が21年末に米国で切れると、ホラー映画が公開されて話題になった。ミッキーへの影響について、エンタメ事情に詳しい弁護士に取材して話を聞いた。
「ミッキーマウス保護法」とまで呼ばれた米著作権法
「ミッキーマウスは、いくつかの注意点に気を付ければ、もうすぐあなたや私のものになるだろう」
米AP通信は2023年12月15日、こんなタイトルのニュースをウェブ版で流した。記事によると、ミッキーが1928年にデビューした短編アニメ映画「蒸気船ウィリー」から95年が経ち、米著作権法の規定から著作権が消滅し、この映画は24年から、自由に利用できるパブリックドメインに入る。ミッキーのガールフレンド、ミニーマウスも同様だとした。
米国では、根強い人気が続くミッキーに配慮して、著作権法が度々改正されたと指摘し、「ミッキーマウス保護法」とも言われているとして、今回のパブリックドメイン入りでも利用は限定的になるとも付け加えた。映画のミッキーだけで、より現代的なミッキーはまだ使えず、ミッキーが商標登録されていることから、その不正使用は許さない方針もディズニーが示しているとした。
著作権切れの情報は、日本でも、19日ごろからネットニュースやX(旧ツイッター)上で話題になり、ミッキーをどの程度2次創作に使えるのか関心を集めた。
「ミッキーがあふれる日がくるかも」といった憶測も一部で出たが、「全てのミッキーの著作権が切れるわけじゃないよね?」「安易にデザインを使うと普通に危ない」などと冷静に見ようとする意見も多かった。
エンタメや知的財産法に詳しい田中敦弁護士は20日、J-CASTニュースの取材に対し、米国での今後の状況についてこう話した。
「日本での著作権は明確でなく、2次創作を扱うのは難しい」
「ミッキーは、その後デザインを変えるなどブラッシュアップし、それらの著作権はまだ存続しています。商標権には期限がなく、ディズニーやミッキーマウスといった名称は使えません。ミニーも同じで、必ずしも自由に使えるわけではありません。しかし、米国では、その影響は出るのではないかと思っています。限定的ではありますが、プーさんの映画と同じように、パロディなどの2次創作がこの後に出て来る可能性はあるでしょう」
日本では、著作権制度が米国と違っており、権利が映画にあるか個人にあるかなどによって、その期限について見方が違うと専門家からX上などで指摘されている。
田中弁護士も、そのことを指摘したうえで、こんな見方を示した。
「日本の著作権法では、30年ぐらい先にミッキーの著作権が切れるとの説のほか、すでに切れているとの説もあります。しかし、切れたともされたタイミングで、ミッキーを使った作品は出てきませんでした。4年前に、米ディズニー本社を訪問し、その知財戦略について聞いたことがあります。初期映画の使用はやむを得ないものの、その将来を見込んで準備していました。ディズニーでは、ミッキーを不注意に使わないよう目を光らせていますので、米国でパブリックドメイン化しても、すぐに偽物は現れないと思います。ミッキーを使った2次創作があふれ返ることもないでしょう」
その一方で、パブリックドメイン化を誤解した動きも一部で出るのではないかとの懸念も示した。
「うわさが出回って、きちんと理解をしないまま、著作権を侵害する使い方がされる可能性もゼロではありません。これまでに、ミッキーを巡る事件は聞いたことがありませんが、最後は、裁判所の判断になるでしょう。2次創作については、権利者が黙認するケースもありますが、権利侵害の可能性もありますので、ディズニーの場合は、コミケなどでミッキーの2次創作を扱うのは難しいと思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)