「腐ったマフィン」問題、保健所は食中毒と断定できず それではなぜ体調不良は起きたのか

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   アートイベント「デザインフェスタ」で腐った状態で販売されたとして、2023年11月に自主回収、返金対応が行われていたマフィンについて、販売者は12月19日に公式サイトで、目黒区保健所から「食中毒と断定できないとの調査結果の説明」を受けたと明らかにした。これにともなって、行政処分は見送られている。

   しかし、マフィンを食べた複数人が体調不良を訴え、実際に保健所に報告している。直中毒でないとすれば、なぜ体調不良は起きたのか。専門家は「腐っているものを食べてしまったと認識することによる心因性の体調不良」など、いくつか考えられる可能性を挙げている。

  • 販売者のインスタグラムより(現在は削除)
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  • 販売者の公式サイトより
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  • 販売者のインスタグラムより(現在は削除)
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  • 販売者の公式サイトより

検体からは「食中毒菌及びウィルスが検出されなかった」

   販売者の公式サイトによると、調査結果は「(1)当店の食品従事者の検体、(2)食中毒患者の疑いがある7名のお客様の検体及び(3)お客様から提供された本件食品15検体のいずれからも、食中毒菌及びウィルスが検出されなかった」というもの。

   目黒保健所の担当者は20日にJ-CASTニュースの取材に対して、改めて調査結果について説明。体調不良を訴え調査に協力したのは10人で、腐っていたかどうかについては基準がないが、ものによって差があった可能性なども示しつつ、検査したマフィンは「見た目が明らかにおかしいものはそれほどなかった」と話した。

   11月16日までに自主回収が開始された際は、健康への危険性の程度について、「喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が高い場合」(厚生労働省ウェブサイトより)に分類されるCLASSⅠとなっていたことが話題となっていた。ただ、目黒保健所の担当者は「健康被害があるものの多くはCLASSⅠにされ、厚労省のリコールの検索サイトを見てもCLASSⅠはたくさんあります。今回、厚労省と調整のうえ設定しました」と説明した。

「腐っている状態だが食中毒の原因菌が存在しない」場合とは

   販売されたマフィンは納豆のような匂いがしていたとされ、X(旧ツイッター)では糸を引くマフィンの動画も投稿された。腐っていた可能性があるが、腐っている状態と食中毒の原因となる細菌がある状態はどう違うのか。管理栄養士の成田崇信さんは12月20日、J-CASTニュースの取材に次のように説明した。

「腐っているとされる状況は、食品の中で微生物が大量に繁殖した状態で、主に悪臭や臭いが発生したケースをいいます。食中毒の原因菌の多くは、食品の中で増えても悪臭や酸味を発するケースはあまりありません。微生物が食品中で繁殖し、嫌な臭いや食品本来の味を損なうものを腐敗といいますが、良い香りや旨味、適度な酸味を呈するようにコントロールされる場合には発酵と呼ばれます。人間の体に有害な微生物が付着していたり、食品の中で増殖した場合に食中毒の原因になります。食品中で繁殖する細菌は数多いですが、食中毒を起こすタイプの細菌はほんの一部です」

   今回のマフィンは、食中毒の原因となる細菌は発見されなかったものの、腐っていた可能性はある。「腐っている状態だが食中毒の原因菌が存在しない」場合に体調不良が起こる可能性について、成田さんはまず「心因性の体調不良」を挙げる。

「まず考えられることは、腐っているものを食べてしまったと認識することによる心因性の体調不良です。学校給食で異臭のする牛乳が提供され、吐いたり腹痛を訴える児童生徒がでたとニュースになることがありますが、これは心因性の体調不良の事例といえるでしょう。後に検査をしても有害物質は検出されないことがほとんどです。変な臭いや味に対し、危険を感じるのは生物として正しい反応であり、普段と何かが違ったり明らかにおかしなものを口にした場合、体が拒絶するというのは当然のことなのかもしれません」

   「細菌がつくりだした成分が通常よりも多すぎた場合」にも体調不良を引き起こすことが考えられるという。

「細菌がつくりだした成分が通常よりも多すぎて、嘔吐や軽い腹痛を引き起こす可能性はありそうです。体への刺激が強いと胃腸に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。食中毒細菌のつくり出す毒素は、味や臭いがなく、少量であっても体に大きな影響を与えるものがほとんどであり、この点が大きく異なります」

「検査では検出されなかったけれど、なかったとはいえない」可能性

   この2つ以外で、今回のマフィン購入者の体調不良の原因として考えられる可能性については、次のように見解を示した。

「販売個数が多く、その中には食中毒細菌が繁殖したものも存在していたというケースが考えられます。全部のマフィンが回収されたわけではないため、検査では検出されなかったけれど、なかったとはいえない、という感じです。これだけ非衛生的な管理をしているのですから、出てもおかしくはないでしょう」

   マフィンの製造や保存環境については、販売者がインスタグラム(現在は削除)で「保管場所はクーラーをガンガンにかけて、18度以下を保っておりました」「1人で製造をしておりますので、5日間ずっと製造しないと間に合わないため、製造し続けておりました」などと事情を説明していた。

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