「腐っている状態だが食中毒の原因菌が存在しない」場合とは
販売されたマフィンは納豆のような匂いがしていたとされ、X(旧ツイッター)では糸を引くマフィンの動画も投稿された。腐っていた可能性があるが、腐っている状態と食中毒の原因となる細菌がある状態はどう違うのか。管理栄養士の成田崇信さんは12月20日、J-CASTニュースの取材に次のように説明した。
「腐っているとされる状況は、食品の中で微生物が大量に繁殖した状態で、主に悪臭や臭いが発生したケースをいいます。食中毒の原因菌の多くは、食品の中で増えても悪臭や酸味を発するケースはあまりありません。微生物が食品中で繁殖し、嫌な臭いや食品本来の味を損なうものを腐敗といいますが、良い香りや旨味、適度な酸味を呈するようにコントロールされる場合には発酵と呼ばれます。人間の体に有害な微生物が付着していたり、食品の中で増殖した場合に食中毒の原因になります。食品中で繁殖する細菌は数多いですが、食中毒を起こすタイプの細菌はほんの一部です」
今回のマフィンは、食中毒の原因となる細菌は発見されなかったものの、腐っていた可能性はある。「腐っている状態だが食中毒の原因菌が存在しない」場合に体調不良が起こる可能性について、成田さんはまず「心因性の体調不良」を挙げる。
「まず考えられることは、腐っているものを食べてしまったと認識することによる心因性の体調不良です。学校給食で異臭のする牛乳が提供され、吐いたり腹痛を訴える児童生徒がでたとニュースになることがありますが、これは心因性の体調不良の事例といえるでしょう。後に検査をしても有害物質は検出されないことがほとんどです。変な臭いや味に対し、危険を感じるのは生物として正しい反応であり、普段と何かが違ったり明らかにおかしなものを口にした場合、体が拒絶するというのは当然のことなのかもしれません」
「細菌がつくりだした成分が通常よりも多すぎた場合」にも体調不良を引き起こすことが考えられるという。
「細菌がつくりだした成分が通常よりも多すぎて、嘔吐や軽い腹痛を引き起こす可能性はありそうです。体への刺激が強いと胃腸に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。食中毒細菌のつくり出す毒素は、味や臭いがなく、少量であっても体に大きな影響を与えるものがほとんどであり、この点が大きく異なります」