来年の賃上げ率、今年上回る2年連続「歴史的水準」の予測 それでも実質賃金がマイナスの理由

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長期化するインフレ進行で、経営者側も折れた

   どうして、こういう残念な未来が待っているのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、リポートをまとめたみずほリサーチ&テクノロジーズの主席エコノミスト河田皓史(かわた・ひろし)さんに話を聞いた。

――賃上げ率がプラス3.8%という予測は、今年の賃上げ率プラス3.6%(厚生労働省まとめ)より高いです。その要因として4つの理由をあげていますが、一番大きいのは何でしょうか。

河田皓史さん まず、深刻な人手不足があります。多くの業界で働き手の取り合いになっています。賃金を上げないと来てくれません。次に企業の収益が好調で、人件費アップの原資があるという点があげられます。

しかし、中でも一番大きな理由は、長期化するインフレの進行です。インフレによって実質賃金が下がり続けているため、近年、強気で労働者側の要求を突っぱねてきた経営者側も、労働者の要求に応じざるを得なくなっています。

この3つがそろっているので、組合側も強気になって、連合が「5%以上」の賃上げ要求水準を掲げたり、金属労協が前年比1.5倍以上のベア要求を決めたりするなど、賃上げ攻勢を強めています。こうした動きに、経営者側も一定の理解を示すようになりました。

――政府の賃上げムードの後押しも効いていますか。

河田さん それも大きいですね。昨日(2023年12月19日)、日本銀行が政策決定会合を開き、大規模金融緩和の維持を決めました。日銀がマイナス金利から脱する出口戦略に踏み切れない理由を、植田和男総裁は「賃金上昇を伴う物価上昇に至っておらず、物価と賃金の好循環が見通せない」と述べています。

もはや、物価上昇を上回る賃上げの実現は、政府や日銀、経済界、労働界が一丸となって目指す目標となっており、一歩ずつ前に進んでいる道中だと思います。
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