「社員1人の交際費、月平均1万8000円」ってホント? 自腹を切って飲む人に調査員が明かす交際費の裏側

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   社員の交際費、月平均1万8000円ってホント? 「私、自腹を切って飲んでいのですが...」という人も多いだろう。

   帝国データバンクは2023年12月15日、「特別企画:全国企業『交際費支出』動向調査(2022年度)」を発表した。

   コロナが落ち着いて交際費の額が急増しているというが、誰が使っているのか。調査担当者に聞くと――。

  • 乾杯で始まる接待の飲み会
    乾杯で始まる接待の飲み会
  • (図表1)社員1人の「月あたり交際費」推移(帝国データバンクの作成)
    (図表1)社員1人の「月あたり交際費」推移(帝国データバンクの作成)
  • (図表2)都道府県別の交際費支出(帝国データバンクの作成)
    (図表2)都道府県別の交際費支出(帝国データバンクの作成)
  • 乾杯で始まる接待の飲み会
  • (図表1)社員1人の「月あたり交際費」推移(帝国データバンクの作成)
  • (図表2)都道府県別の交際費支出(帝国データバンクの作成)

交際費1位大阪府、2位奈良県、3位福岡県

   交際費については、2023年12月14日、税法上、経費扱い(損金算入)として非課税にできる「1人あたり5000円以下」の飲食費について、政府・与党が上限を1万円に引き上げる方針を固めたばかり。同日の自民党総務会で2024年度税制改正大綱に反映させる案が了承された。

   帝国データバンクの調査は、2022年度決算(22年4月~23年3月)のうち、「接待交際費(交際費)」の支出動向が判明した企業約15万社・500万人分の交際費を推計した。その結果、社員1人あたりの1か月の交際費の平均は、推計で1万8192円となり、前年度から2割超の大幅増加となった。

   ただし、決算に報告される交際費には、贈答品などを含むため、すべてが飲食代として計上されたものではない。2019年度には過去10年で最高額となる2万3383円に達した。コロナ禍での行動制限に伴う「飲食禁止」といった社内規定も背景に、21年度は1万6653円に激減していたが、2022年度は9割前後に回復したかたちだ【図表1】。

   業種別にみると、社員1人当たり交際費が最も高いのは「不動産業」で5万9515円。これは、管理会社や協力先となる建設企業など、人的な交流範囲が多岐にわたることが要因とみられる。

   一方、興味深いのは都道府県別(本社所在地)にみた数字。交際費が最も高いのは「大阪府」で、22年度では2万8324円。2位に「奈良県」(2万5366円)、3位に「福岡県」(2万3732円)と続き、関西以西の企業で交際費を多く支出する傾向が目立った【図表2】。

居酒屋が「5000円飲み放題」を設定する理由

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。

――政府・与党は、経費扱いとして非課税にできる「1人あたり5000円以下」の飲食費について、上限を5000円から1万円に引き上げる方針を固めています。これが実現したら、交際費で飲む人がますます増えるでしょうか。

飯島大介さん 消費を拡大する景気対策と思われますが、政府の施策なので、いいとか、悪いとかを言える立場にありません。しかし、飲食業界をはじめ周辺の業界は喜ぶでしょうね。みな、物価高で苦しんでいますから、恵みの雨のような施策です。

たとえば、居酒屋などが「5000円(税込み)飲み放題」といった料金を設定しているのは、非課税にできる交際費の飲食代の上限を意識しているのは間違いありませんから、料金をもっと高く設定するところも増えるでしょう。

――今回の調査を報じたヤフーニュースのコメント欄を見ると、「交際費1万8000円? うちの会社ではこんなに使えない」「融通が利く中小企業の話ではないか。管理が厳しい大企業では、本部長クラス以上でないと、なかなか交際費で飲食なんか難しい」といった意見が目立ちました。

中小企業には、800万円までは交際費を損金算入して法人税負担を減らせる特例がありますよね。やはり、交際費で飲むのは中小企業に多いのでしょうか。

飯島さん そういう見方があることは承知していますが、必ずしも中小企業は多いとは言えないと思います。飲み会(飲食代)に目がいきがちですが、帝国データバンクが調査した「交際費」は、お菓子などの贈答品を含めています。

大企業でも管理職が取引先をもてなす必要があり、お菓子を贈ったりする場合が多いはずです。接待の飲み会のような目立つケースではなく、目立たないところで交際費を使っていると思われます。

「人と人とのお付き合い」を大事にする大阪商人

――なるほど。ところで、都道県別の交際費支出のランキング地図【図表2】を見ると、トップが大阪府で、2位奈良県、3位福岡県となっています。交際費の額の高いところは、近畿圏や西日本に集中しています。

大阪府は「いかにも大阪商人っぽい感じ」で納得がいきますが、奈良の2位は不思議です。また、企業が非常に多い東京が上位に入らないのはなぜでしょうか。

飯島さん 近畿圏が上位なのは、もしかしたら、大阪商人に代表されるように「人と人のお付き合い」を重視する文化が定着しているからかもしれません。奈良県が2位なのは、大阪府の隣にあるからでしょう。

建設業や家電業界など大阪の企業とは、元受けと下請けの関係にある企業が多く、お互いに持ちつ持たれつで、接待しあっているからと思われます。その関係は京都府や和歌山県にまで広がっています。

一方、東京都の企業は、関西の企業ほどベタベタした人間関係ではないのかもしれません。それに大企業が多く、従業員数も多いですから、社員ひとり一人にそんなに交際費を使われてはたまらないという事情もあるでしょう。ただ、それでも都道府県ランクでは7~8位です。

関東圏の企業は、全国に取引先を展開している企業が多いですから、近畿圏ほどではありませんが、交際費の支出ランキングは高めに出ています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

姉妹サイト