キャリア意識高い人ほど転職せず定年まで働く 従業員がどんどん辞める会社は何をすべきか

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   「キャリアプラン意識が高いと、転職してしまうのではないか」と思われがちだが、意外にも今の会社に満足しており、定着率が高いという。

   こんな人事の「常識」を覆す調査結果が出た。人事向けサービスを展開する調査会社のアスマーク(東京都渋谷区)が2023年12月7日に発表した調査「自主調査 キャリアプラン意識と離職意向の関係」が、それだ。

   なぜ、「常識」と真逆の結果が出たのか。調査担当者に聞くと、キーワードは「鶏と卵」だった。

  • スキルを磨きキャリア計画を立てる女性(写真はイメージ)
    スキルを磨きキャリア計画を立てる女性(写真はイメージ)
  • (図表1)キャリアプラン意識別にみる、満足度・働き方意識(アスマーク調べ)
    (図表1)キャリアプラン意識別にみる、満足度・働き方意識(アスマーク調べ)
  • (図表2)年代別のキャリアプラン意識(アスマーク調べ)
    (図表2)年代別のキャリアプラン意識(アスマーク調べ)
  • (図表3)企業の規模別のキャリアプラン意識(アスマーク調べ)
    (図表3)企業の規模別のキャリアプラン意識(アスマーク調べ)
  • スキルを磨きキャリア計画を立てる女性(写真はイメージ)
  • (図表1)キャリアプラン意識別にみる、満足度・働き方意識(アスマーク調べ)
  • (図表2)年代別のキャリアプラン意識(アスマーク調べ)
  • (図表3)企業の規模別のキャリアプラン意識(アスマーク調べ)

キャリア意識が高い人の半数以上「定年まで働きたい」

   アスマークの調査(2023年3月1日~14日)は、全国の20歳から64歳の有職者(契約社員/派遣社員含む、パート・アルバイトは除く)1万人が対象。まず、自身のキャリアについて計画的に考えている人かどうかを聞くと、「キャリアプランを立てている人」は2割強(21.8%)だった。

   その人たちに「企業に満足しているか」と「転職に前向きか」を聞くと、「キャリアプランを立てている人」の「企業の満足度」は62.8%と非常に高く、「特に考えていない人」(36.2%)を大きく上回った。また、「定年まで働く」(53.1%)という人も半数以上おり、「特に考えていない人」(42.0%)を10ポイント近く上回った。

   そして、「転職に前向きか」を聞くと、「キャリアプランを立てている人」は24.7%しかおらず、「特に考えていない人」(29.3%)より少なかった【図表1】。つまり、「キャリアプランを立てている人」は「特に考えていない人」よりも、今の企業の満足度が高く、転職よりも「今の企業で定年まで働きたい」という意見が多かったわけだ。

   次に、キャリアプラン意識を年代ごとにみると、「キャリアプランを立てている人」は20代が最も多く、45歳以上のミドルシニアになると、ガクンと減ることがわかった【図表2】。

   また、企業の規模別にみると、300人未満の企業では「キャリアプラン計画者」が少なくなり、小規模になるほど「特に考えていない人」が増加する傾向になった。一方、1000人や3000人といった大企業では「プランを立てている人」の割合が多くなる【図表3】。

   規模が大きい企業のほうが、社内にキャリアモデルが多く、キャリアプランが立てやすい可能性がありそうだ。

「ジョブ型」を望む若者は、キャリアプランを立てている

   今回の結果をどうみたらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行ったアスマークの担当者に話を聞いた。

――自身のキャリアプランに関して、「計画を立てている人」が約21%しかいないとは、非常に低い印象を受けますが、これまでの類似の調査でも、キャリア意識はこんなものでしょうか。

調査担当者 「どちらともいえない」が50%以上のことから、何も考えていないわけではないが、自信をもって具体的に計画を考えていると言えるほどの人は少ないのではないかという認識です。

――「キャリアプランの計画を立てている人」が20代に多く、45歳以降にガックリ減るという結果ですが、この理由はなぜでしょうか。働き盛りのはずなのに不思議です。やはり、キャリアの先が見えている、あるいは子育てなど生活に追われているということでしょうか。

調査担当者 それもあるかとは思います。ほかの仮説としては、今の若い世代は1社で勤め上げるのが当たり前という世の中で育っていません。転職やフリーランスも含めてさまざまな選択肢がある中で、若い頃からキャリアプランについて考える機会が多いことや、若年層ほど特定の職務内容やスキルを限定して仕事をする「ジョブ型」を望むので、おのずとキャリアを意識することが多いということも考えられます。

――45歳以降のミドルシニア世代のキャリアプラン意識を高めるにはどうしたらよいでしょうか。

調査担当者 調査結果では、大企業など、キャリアプランが描きやすい企業に勤めている人のほうが、キャリア意識が高いという結果が出ていますので、「鶏が先か、卵が先か」という話はありますが、企業側からできることとしては、定年後や再雇用での働き方も含めたキャリアプランを明示することが一助になるのではないでしょうか。

離職者が多い企業は「従業員満足度調査」が必要だ

――今回の調査結果で面白いのは、そのキャリア意識の高い人は、今のいる会社に定年まで勤めたいという人が多いことです。これまでの「常識」を覆したわけですが、キャリアプランを立てている人は、大きな企業ほど多いという結果も出ています。

これは「鶏が先か、卵が先か」という議論にも関係しますが、やはり大企業だから満足度が高く、離職意欲が低くなるのでしょうか。また、大企業ではキャリアモデルが多いから、キャリア意識が高まるという面もありますよね。

調査担当者 今回の調査を別観点で分析した資料では、満足度や離職意向に影響が大きい項目のトップ3に、「仕事での貢献実感」「会社への愛着度」「その会社でのキャリアパスが描けるか」が上がっています。

大企業のほうがこの3つに対する対策がしっかりとられているからという可能性はありそうです。また、キャリアモデルの点で言うと、規模の大きい企業にはさまざまな部署・職種があるため、目指したいロールモデルとなるような先輩がいる可能性が高いとはいえるかと思います。目標になる先輩が見えると、キャリア意識につながるのかもしれません。

ただ、今回はキャリアプラン意識に焦点を当てて分析していますが、実際はさまざまな要因が組み合わさって離職の原因となっており、企業によってその理由や要因の配分が異なります。

どんどん従業員が辞めて困っている企業が離職対策を行う際には、まず社内で「従業員満足度調査」などをしっかり行って、自社の離職要因がどこにあるのか、客観的に分析されることをお勧めします。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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