「こんな人事評価、納得できません!」不満ぶつけてきた若手部下の心を動かし、Ⅴ字回復させた上司の意外なコトバ

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20代での挫折経験が、大きな成長のバネに

   このエピソードから学べるポイントを、2つ挙げましょう。

   第1に、仕事の失敗、挫折経験は、その乗り越え方によっては、本人の成長への大きなバネになることです。

   若手ならなおさらです。やる気も能力もあったNさんですが、新人時代の仕事の仕方は営業実績と結びつける視点が甘く、努力も空回り。周囲の善意に甘え、自分を評価してもらえない状態を「他責」で捉え、言い訳ばかりしていました。

   しかし、上司の評価と言葉に目覚め、落ち込んだあと異動も前向きにとらえ直し、「自責」に切り替わると、みるみる成長につながりました。失敗は決して無駄でなく、内省と活かし方次第。すべてを学習材料とすれば、成長できるのです。

   第2に、Nさんの変化は、上司Kさんの「厳しい愛」がおよぼした力でもある、ということです。

   昨今、社員の心理的安全性、ウエルビーイング、組織エンゲージメントなどの大切さが唱えられ、部下に配慮し、傾聴し、承認することが重視されがちです。ハラスメント防止の観点からも、部下に厳しい言動で迫ることは是とされません。

   しかし肝心なのは、部下のことを心から思うなら、必要な時には厳しく叱ることも大切だということ。本人の成長やキャリアのためには、しっかり現実と向き合うことが必須。そう思えばこそのKさんの言葉でした。

   すべては深い愛情があってゆえ。Nさんも、そのことを感じ取りました。部下のことを親身に考えられるか。個人尊重が求められる時代だからこそ、冷たい管理者ではなく、熱い支援者になれるかが問われているのです。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。近著に、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。

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