政府・こども未来戦略会議が2023年12月11日、開催された。そこで提出された「こども未来戦略」の案が、注目されている。現状の少子化傾向が改善されないまま2030年代に入ると、「我が国の若年人口は現在の倍速で急減する」という見込みを示し、「少子化はもはや歯止めの利かない状況になる」と強い危機感を示している。
そして「2030年代に入るまでのこれからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」「少子化対策は待ったなしの瀬戸際」という。今後3年間の集中的な取り組みを「加速化プラン」として示し、対策を打ち出している。当事者となる30代男性Aさん(未就学児と小学生の2児の父)に、この案の感想を聞いてみた。
「月4000円を5年間」では子どもをつくる動機にならない
「次元の異なる少子化対策の実現に向けて」というサブタイトルがついた案は、3つの基本理念のひとつに「若い世代の所得を増やす」を掲げている。そして「加速化プラン」の具体的な施策として、ライフステージを通じた「子育てに係る経済的支援の強化」や「若い世代の所得向上」に向けた取り組みを行うとしている。
この中で示されているのは、子育て世帯等が良質な住宅を取得する際に利用できる住宅ローン「フラット35」について、子どもの人数に応じて金利を引き下げる制度を2023年度中に開始するという施策だ。
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン。この施策については、すでに2023年補正予算案に関連費用13億円を盛り込んだニュースとして報じられているが、30代既婚男性のAさんは「効果があるのか」と疑問符をつける。
「まず、優遇措置のインパクトが弱いです。35年ローンで3000万円を借り入れた場合、現在の金利水準を0.25%引き下げたとしても、毎月の返済額は9万9000円から4000円減る程度。国としては相当な事業費をかけることになるんでしょうけど、個人的にはこれで子どもを1人増やそうという動機にはならないですね」
金利優遇措置が「借り入れから5年間」という短い期間しかないことも、利用にちゅうちょすると予想する理由になっている。
「昔と違って、歳を取れば給料が上がるわけじゃないですからね。支払い能力が横ばいなのに、金利だけ5年後にバッと上がったら生活は破綻しかねないんじゃないですか。5年後には、よりお金が必要になるかもしれないんだし」