「とりあえず、103万円を超えなければ安心」という意識
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――2023年に収入上限を設定していた人が約半数(50.5%)、一方、「収入制限なし」の人は約3割(36.4%)でした。やはり、「年収の壁」を意識して働く人が多いのでしょうか。また、「103万円」を上限にする人が多いのはなぜでしょうか。
川上敬太郎さん 仕事と家庭の両立を希望する主婦層は、やはり年収の壁を意識する人が多いのだと感じます。意識している壁は人それぞれで、中でも所得税を払うことになる目安の「103万円の壁」を意識している人が、社会保険加入に関わる「130万円の壁」や、配偶者特別控除に関わる「150万円の壁」より多いようです。
ただ、「103万円の壁」の場合、103万円を超えた分に所得税がかかるので、「130万円の壁」のように壁を超えることで超える前よりも手取りが減ってしまう、いわゆる「働き損」は生じません。
それなのに「103万円の壁」を意識している人が多い理由の1つとして、配偶者が勤める会社が家族手当などの支給要件として年収103万円を上限にしているケースが考えられます。また、年収の壁は複数存在しており、それぞれの違いがわかりづらいことから、「とりあえず103万円を超えなければ問題なさそうだ」と漠然としたイメージで上限を設定している人もいるかもしれません。
――パッケージを利用するかという問いに、「利用する」が20.4%しかいませんでしたが、パッケージへの批判でしょうか。私は「利用せず、扶養枠を外して働きたい」という人が26.4%と、「利用する」の20.4%より多かったことに、働く主婦層の熱い「思い」を感じたのですが。
川上さん 必ずしもパッケージに批判的というわけではないのだと思います。収入を増やしたくても、家庭とのバランスを考えると思うように勤務時間を増やせるとは限らず、利用しようにもできない人が多いのではないでしょうか。それでも、利用する人が2割いるとも言えるのかもしれません。
また、もとから収入制限を設定しない人が多く、2024年の見込みでも「収入制限は設定しない」と回答した人が4割近く(39.1%)に上ります。一方、パッケージを「利用せず、扶養枠を外して働きたい」人はそれより少なく3割(26.4%)を切っているので、パッケージが実施されたことで、これまでは扶養枠に入るつもりはなかったものの、「だったら、パッケージの対象期間だけでも扶養枠に収めよう」と考える人も一定数いる可能性はあると思います。