「憧れの芸能界...オーディションに行ったら合格しちゃった!」と有頂天になるアナタ。高額な登録料やレッスン料を支払ったあげく、全然仕事が来ないじゃないですか?
若者の夢を「食い物」にする悪徳業者の危険な罠を、国民生活センターが2023年12月12日発表のリポート「【20代要注意】タレント・モデルのトラブル」で警告している。
彼らの悪らつな手口と詐欺に引っかからない方法は――。
「今契約しなければ、チャンスはない!」
国民生活センターによると、こんな事例が代表的だ。
【事例1】急かされて高額なマネジメント契約をしたが、解約したい
インターネットでタレントオーディションの広告を見つけ、面接審査を受けた。「合格した」と電話連絡があり、事務所に行くと、その場でマネジメント業務委託契約の勧誘を受けた。迷っていると、「今契約しなければチャンスはない」と言われ、初期費用約10万円と所属費毎月約3万円のほか、月数回の演技やモデルのレッスン料がかかると説明を受けた。
1年以内の解約時には違約金がかかると説明されたが、具体的な違約金の額の説明はなく、契約書にも詳細の記載はない。高額な契約をしたことを後悔し、1か月後に契約解除の連絡をしたが、レッスンを受ける前にもかかわらず違約金として初期費用約10万円と半年分の所属費を請求すると言われた。(2023年7月・20歳代の女性大学生)
【事例2】解約を申し出たら、高額な解約料を請求された
役者募集サイトで映画のキャストの募集を見つけ、応募した。審査通過のメールがあり、面接に出向くと、「映画のオーディションを受けるには出演実績が必要なので当社に登録しないか」と勧誘された。アルバイトのような形で案件がもらえるとの説明で、事務所に登録することにし、その場で年会費約5万円をコード決済で支払った。
次回の面接日が決まり、出向くと、「確実に仕事ができる業務提携をしないか」と勧誘された。担当者に私のスマホを操作され、約60万円を分割で支払う契約をした。その後事業者を信用できなくなり、解約を申し出ると、40%の違約金が発生すると言われた。解約したい。(2023年8月・20歳代の女性大学生)
「合格」か「不合格」か、どちらに転んでも金を取られる
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の横山彩香(よこやま・さやか)さんの話を聞いた。
――こうした被害相談は増えているのですか。
横山彩香さん ここ10年ほど、毎年700~800件ほどで高止まりしています。2022年度は730件で、そのうち7割以上が女性です。国民生活センターで何度も警告リポートを出しているのですが、一向に減りません。それだけ芸能界に憧れる若者が多いのでしょう。
――どんな手口が多いのですか。
横山さん 事例で紹介したように、まず、オーディションに応募してきた若者に「合格」と伝えます。そして、「事務所に登録すれば、いい仕事をあげる」「今しかチャンスはない」と急き立てて契約を勧めます。
「お金がない」と断っても、「すぐ仕事が入るから問題ない」「仕事をしながら返していけばよい」と、執拗に勧めます。彼らは不意打ち的に契約の話を持ち出し、冷静に考えるスキを与えません。
しかも、面接会場は狭い閉鎖的な空間ですから、圧迫感があり、数人に取り囲まれて「帰らせてもらえないのではないか」と、恐怖を感じたという若者もいます。断りづらい雰囲気に追い込むのが彼らの手口です。
――かなり、悪質じゃないですか。
横山さん そのとおりです。一方、不合格になった若者に対しても「今回は審査に落ちたが、キミには別の方面でいい才能がある。うちに登録して勉強すれば、いい仕事を与えられるようになる」と、巧みな勧誘トークで契約を勧めます。
「合格」か「不合格」か、どちらに転んでもお金を取ろうとするのが悪徳業者の手口なのです。
「面接会場から帰れないのでは」という恐怖感
――こうした業者に登録して、実際に仕事がくるのですか。
横山さん レッスン代や毎月の登録費ばかり取られて、一向に仕事が来ない、という被害相談があとを絶ちません。解約を申し込むと、高額な解約金を請求されたりします。
――彼らにだまされないようにするには、どうしたらよいのでしょうか。
横山さん まず、決して面接会場ではすぐに契約を結ばないことです。その事務所がしっかり活動しているかどうか、具体的な内容やサポート体制、費用面の条件をよく確認しましょう。
国民生活センターで、大手芸能事務所などが所属する業界団体にヒアリングを行った結果では、「事務所に登録した若者からは、初期投資の段階で高額なマネジメント契約料やレッスン料など、お金を要求したりすることはない」ということでした。
つまり、最初から高額のお金を要求する事務所は怪しいということです。少しでも不安を感じたら、その場でキッパリ断りましょう。
――しかし、芸能界に憧れるのは、若者特有の夢ですよね。
横山さん はい。夢を追うのは若者の特徴です。それだけに、トラブルに巻き込まれないよう、冷静に行動してください。
(J‐CASTニュースBiz編集 福田和郎)