東京都港区の低所得者援助を活用して、お笑い芸人が帝国ホテルのスープ缶詰などのギフトを毎月もらっていたと、テレビの情報番組で明かして話題になっている。
高額納税者が多い港区ならではの手厚い支援策だとみられるが、ぜいたくなのではとの批判も一部で出ている。港区に支援の実情を取材した。
「低所得でも充実した生活」とテレビ番組で紹介
TBS系の番組「情報7daysニュースキャスター」は2023年12月9日、都が高校授業料を24年度から実質無償化する方針を示したことを取り上げ、都民が優遇されるなど自治体で支援の格差が広がっていると指摘した。
その中で、お笑い芸人の井上ポイントさん(40)が、都や港区などの補助を受け、「低所得でも充実した生活」を送っているとスポットを当てた。
それによると、井上さんは、妻、4歳と7歳の息子の4人家族で、年収は、お笑いで280万円、バイトで100万円になる。それでも住宅価格が高い港区内の品川駅近くに住めるのは、家賃が月4万5000円の都営住宅に入居しているためだ。
港区は、セレブの街として全国トップレベルの子育て支援策を行っており、井上さんも、その恩恵を受けた。次男の私立幼稚園入園に補助が出て、長男は小学校入学で6万円の就学援助を区から得て7万円のランドセルを買った。
さらに、区からは、低所得の子育て世帯向けに、月に1回カタログギフトがもらえるといい、井上さんは、その1例として、帝国ホテルのスープ缶詰セットなどを示した。生活費は、多くて月に20万円ほど。余った6万円を投資や貯金に回し、ハワイへ2年に1回旅行に行くとも明かした。
この内容が、11日になって、X(旧ツイッター)上で拡散され、これだけもらったら働きたくなくなる、と驚く声が出た。一方で、「制度を賢く利用してる」などと活用術に感心する向きもあった。井上さんは、ポイントで稼ぐ「ポイ活」をしており、2年間で100万ポイントをためたと公言していることから、その節約分でハワイ旅行などをしたのではとの指摘もあった。
「港区は物価が高いので、低所得者には天国と言うには難しい」
とはいえ、低所得者に帝国ホテルの缶詰ギフトなどを贈ることについて、ぜいたくなのではないかとの批判も出ている。
このカタログギフトは、港区が21年度から「エンジョイ・セレクト事業」として、所得制限をかけて子育て世代にお米やレトルト食品などを月1回提供している。新型コロナウイルス感染拡大による外出制限で低所得者への影響が出ることを考えた緊急対策で始めた。一定の所得基準を超えない両親世帯には、子供が1~2人なら、2500円のセットが2個贈られる。
これに対し、区の公式サイトによると、余裕のある世帯向けのギフトを低所得者に贈るのは間違っているといった区民の声が23年6月に寄せられた。その回答として、区では、賞味期限が短い商品は提供できないのでこの方法を取っていると理解を求めていた。
事業を進める港区の子ども若者支援課は12月12日、J-CASTニュースの取材に対し、その趣旨をこう説明した。
「できるだけたくさんのものをあげたいと考え、市場価格ではなく仕入れ価格で提供するよう業者の方にお願いしています。その業者に特有の販路がありますので、それで実現できています。ぜいたくだという方もおられ、批判も多少ありますが、困窮している利用者の方からは、『また使っています』と好評です。港区は、スーパーの食品なども高めで物価が高いと聞きますので、所得の低い方にとって天国と言うには難しいかもしれないと思っています」
なお、エンジョイ・セレクト事業は、区内の約4000世帯が対象になっており、23年度の予算は約4億2000万円だった。21、22年度はギフト販売会社「シャディ」(東京都港区)、23年度は大手デパート「高島屋」(大阪市)がギフトを選定している。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)