日本人特有の「遠慮」から手助けをしない
――つまり、困っている度合いの深刻な人を見過ごしている可能性があるわけですね。それは、なぜですか。「手伝うことはありませんか」と声をかければいいじゃないですか。
水野さん 日本人が見知らぬ人を助けることが難しい理由に、まず、相手が手助けを必要としていることに気が付かない、目に入らないということがあげられます。2番目は、もし助けを必要としていても、どうしたらよいかわからない、ということがあると思います。
両方の問題に共通しているのは、日本人特有の「遠慮」という気持ちだと思います。典型的なケースが「乗り物の座席の譲り合い問題」です。席を譲ってほしければ、その気持ちを素直に相手に伝えられればよいのですが、相手に迷惑をかけてしまうとか、図々しいと思われてしまうといった「遠慮」があってそれができない。
一方、座席に座っている立場からみると、「席を譲ると失礼になるのではないか」「怒られるのではないか」という「遠慮」があります。若者に席を譲られた高齢者が怒り出したという話もよくありますよね。
――私も60代に入った頃、席を譲られた時、「そんなに老けて見えるのか?」とショックを受けました。いちおう礼を言って座りましたが...。
水野さん 私もウルグアイでは、乗り物に乗るたびに男性から席を譲られて、「年配に見られているの?」と驚きましたが、レディーファーストの国だと知り、笑ってお礼を言って座るようにしました。しかし、最初は日本人的な「遠慮」があって、「申し訳ない」という気持ちがあったことは確かです。
日本人はお互いに「遠慮」があることが、「最も助け合わない国」という結果につながっていると思います。たとえば、視覚に障害がある人が道路脇に立っていれば、まず「お困りですか?」と声をかける、重い荷物を持っている人が階段を登ろうとしていたら、「持ちましょうか?」と手を差し出すことが大事です。
「いや、大丈夫です」と断られてもいいじゃないですか。聞いてみないと、相手が困っているかどうかわかりません。困っていそうな人を見たら、遠慮しないで声をかければいいと思います。