冬のボーナス、企業の24%「増加」だが「減少」「なし」が26% 喜ぶかトホホか、調査担当者に聞いた

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   今冬のボーナス、アップでウハウハの人、支給されずにトホホホの人...悲喜こもごもの師走真っ盛り。

   そんななか、帝国データバンクが2023年12月6日、「特別企画:2023年冬季賞与の動向調査」を発表した。

   「増加」する企業が約24%。一方、「減少」「なし」は約26%。全体的には昨年(2022年)よりアップ傾向だというが、喜んでいいのか、調査担当者に聞いた。

  • もらってうれしいボーナス(写真はイメージ)
    もらってうれしいボーナス(写真はイメージ)
  • (図表1)冬のボーナスの支給状況(帝国データバンクの作成)
    (図表1)冬のボーナスの支給状況(帝国データバンクの作成)
  • (図表2)冬のボーナスが「増加」する企業の割合(帝国データバンクの作成)
    (図表2)冬のボーナスが「増加」する企業の割合(帝国データバンクの作成)
  • もらってうれしいボーナス(写真はイメージ)
  • (図表1)冬のボーナスの支給状況(帝国データバンクの作成)
  • (図表2)冬のボーナスが「増加」する企業の割合(帝国データバンクの作成)

「変わらない」「減少」「なし」で4分の3

   帝国データバンクの調査(2023年11月16日~30日)は、調査対象は全国の1万1396社が対象だ。うち大企業が1746社(15.3%)、中小企業が9650社(84.7%)。

   冬のボーナス(一時金、寸志含む)の1人当たり平均支給額について、「賞与はあり、昨年より増加する(した)」企業は24.1%となった。これは昨年(2022年)より2.9ポイント増えた。特に、旅館・ホテルやリース・賃貸などの観光関連、ポスターやチラシ関連を含む紙類・文具・書籍卸売が高かった。

   ボーナスを増やす企業からは「受注残はバブル期以上」(鉄骨工事)や「観光客およびオフィス勤務の回復」(コンビニ)、「円安によるインバウンド需要の拡大」(旅館)などの意見が聞かれた。

   一方で、「賞与はない」企業は12.2%だった。こちらは、昨年より1.1ポイント減少した。なかでも「繊維・繊維製品・服飾品小売」(アパレル関連)は40.2%と、2年連続で4割を超えたほか、「飲食店」も32.3%にのぼった【図表1】【図表2】。

   ただし、いずれも昨年より5ポイント以上低下しており、徐々に賞与を支給しない企業は減少している。しかし、一方で「変わらない」企業も4割以上の42.0%に達する。

観光復活とオフィス回帰で、「紙」業界が潤う理由

   こうした調査結果をどう見たらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の窪田剛士(くぼた・つよし)さんに話を聞いた。

――今回、冬のボーナスが増加する企業の割合が高い業界のトップが農林水産業(前年比プラス28.8%)になっています。しかし、水産業は福島第1原発の処理水放出問題で、中国とロシアから水産物の輸入禁止措置を受けて、ピンチに陥っているはず。ボーナスがこれほど出るのはどういうわけですか。

窪田剛士さん コロナが収まり、インバウンド需要が復活して旅館、ホテルなどの観光業界が好調なことが大きいです。お客に提供する料理の材料として水産物や農産物の需要が増えました。

――ポスターやチラシ関連を含む紙類・文具が好調なのはどういう理由からですか。

窪田さん これも観光業界が好調なことが大きな理由です。観光案内のポスターやイベントのチラシが大量に復活したため、製紙関係の需要が大きく伸びたのです。

「紙」が好調なのは、コロナが収まってテレワークが減り、多くの人がオフィスに戻ったことも大きいです。テレワークなど紙は使いませんが、オフィスではコピー、会議の資料などに紙を大量に使いますからね。文房具関係が伸びたのも、オフィス回帰が理由です。

――一方で、アパレル業界(約40%)や飲食店業界(約30%)ではボーナスを出せないところが多いですね。これはどういうわけですか。

窪田さん アパレル業界は、従業員が5人以下の零細企業が多く、どうしてもボーナスを出せるところが限られてきます。飲食店業界も中小・零細企業が多いうえ、いいところと悪いところの落差が激しく、厳しいです。今年5月に新型コロナが「5類」に移行しましたが、両業界ともまだ先行きを見通せない状態です。

経営者は皆「従業員に報いたい」と思っている

――今冬のボーナス支給予想ですが、たとえば、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが11月に発表した調査によると、民間企業の1人当たり平均が40万1438円、前年比プラス2.2%でした。今年の春闘に賃上げ率が3.6%増と30年ぶりの高水準だったのに比べて、物足りない内容だったと調査したエコノミストは分析しています。

今回の調査結果をどうみますか。喜んでいい内容でしょうか。

窪田さん 確かに金額ベースで見ると、思ったよりはボーナスが増えていない感じがします。物価高の影響もあり、まだ経済全体を盛り上げる段階に至っていません。

しかし、「ボーナスなし」や「減少」の割合が減って、少しずつ回復の兆しが出ていることは確かです。それに、経営者たちはみな、「コロナで苦労をかけた従業員たちに、何とか報いたい」と願っている気持ちは同じです。それを春の賃上げで報いるか、夏冬のボーナスで報いるかという選択肢の違いだと思います。

来年に期待です。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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