日本の数学教育は日常生活で役に立たない?! 数学者・秋山仁氏が問題の核心を指摘

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   OECD(経済協力開発機構)加盟国の15歳の学習到達度を測る「PISA(ピザ)」の結果が、2023年12月5日に公表された。

   それによると、日本は「数学的リテラシー」と「科学的リテラシー」の2分野でOECD加盟国(37カ国)のなかで1位に、「読解力」では2位になったという。

   もっとも、一方では「日本では、数学の授業で日常生活を絡めた指導を受ける頻度が他国に比べて少ないことがわかった」(朝日新聞)といった見方もなされているが、思えばこのような課題点が指摘されるのは今に始まったことではない。

   とかく浮世離れしていると批判されがちな日本の数学教育だが、改めるべき点はあるのか。J-CASTニュースBiz編集部は、東京理科大学理数教育研究センター長で、数学者の秋山仁氏に意見を求めた。

  • あの苦労は何だったのか?
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時間的余裕が現行のカリキュラムにはない

   前述の朝日新聞の記事の最後には、「生徒は数学が日常生活とつながっていると思えることで楽しいと感じ、より勉強に力が入る」と分析する文科省の担当者のコメントが掲載されているほどだ。

   また、近年では2022年5月中旬、日本維新の会所属の藤巻健太議員が「三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」とのテーマをSNSで話題にするとともに、衆議院の財務金融委員会で議論、一連の話題はネット上で賛否両論を巻き起こした(なお、藤巻議員は三角関数の不要論には与しないとしている)。

   ようするに、「日本の数学教育は数学嫌いを増やしている」というよく聞かれる論点だが、これについて、秋山氏はJ-CASTニュースBizの取材に「学習への動機づけ」がとにかく重要であると指摘した。

   秋山氏いわく、動機づけのきっかけとして強力なのは、やはり、数学の理論が日常生活に応用されていることを実感させる実例の提示だという。

   ただ、それを実現させるほどの時間的余裕が現行のカリキュラムにはないため、教員が実例を挙げようにもその時間がなく、数学教育が浮世離れしているといった批判が出てしまうのだとみる。

学習への動機づけが消極的

   日本の数学教育への批判が出るもう1つの理由を、秋山氏は指摘した。

   カリキュラムの密度がただでさえ高い中、数学が受験科目として使われる状況がある以上、生徒が数学を学ぶうえでの1番の「学習への動機づけ」が、「試験で赤点を取らない」「入学試験を突破する」といった消極的なものになっているという。だから、学問の本来の姿である好奇心を掻き立てるものになっていないのではないか、と問いかけた。

(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)

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