気象庁による2023年12月から2024年2月までの向こう3か月の天候の見通し(3か月予報、11月21日発表)によると、この冬は気温が高くなる見込みの地域が多く、暖冬になる可能性が高いという予測が出ている。これは、エルニーニョ現象も影響しているらしい。
それにともない、最低気温も高くなることから、降雪量にも影響しそうだ。北日本・日本海側、東日本・日本海側、西日本・日本海側は平年よりも雪が少ないと見込まれている。
こうした暖冬で困るのがスキーリゾートだ。
現代のスキー場では「人工造雪機」や「人工降雪機」なども使って「雪」を確保しているが、この異例の暖冬のため準備が整わず、オープンを当初予定の12月中旬から遅らせるスキー場もある。
スキー場経営には、どんな影響があるのか。J-CASTニュースBiz編集部では、各地のスキー場を取材した。
人工造雪機のほうが、人工降雪機よりもコスト的に高く
長野県上田市にある菅平高原スノーリゾート「ハーレスキーリゾート」。担当者を取材すると、2023年12月11日段階ですでにオープンしていた。ところが、である。「雪が足りず開放しているコースは少ない」と担当者は話す。
そもそもスキー場を整備するためには、天然の雪以外に、製氷機で作った氷を細かく削って噴射する「人工造雪機」や、圧縮した水と空気を噴射して空気中で凍らせる「人工降雪機」などの装置も活用している。
「プラス気温の間は人工造雪機を、マイナス気温になったら人工降雪機を稼働させる予定だが、天然の雪が降らないとコスト的に厳しい」と前出の担当者。氷をつくる工程がある分、人工造雪機のほうが、人工降雪機よりもコスト的には高いという。そのため、気温が下がらないと経営的に厳しい様子だ。
また、岐阜県郡上市の「ホワイトピアたかす」では、人工造雪機を使ってコースを確保し、11月18日からオープンしている。しかし、こちらのスキー場でも
「人工造雪機で作ったものなので、すべることができるコースは限られていて、すべてのコースを開放していない。全コースをオープンするには、やはり天然の雪に頼らならなければならない。現時点では、天気予報が頼りにならなくて困っている」
と担当者は話す。そのため、これからのウインタースポーツのハイシーズンに向けて来場者のために普段は使わない人工降雪機を使用する予定だが、その場合コストは膨らんでしまうことを懸念している。
滋賀県米原市の「グランスノー奥伊吹」にも話を聞いた。担当者を取材すると、「人工造雪機を1台テストしているが、気温が高すぎて予告していた12月16日のオープンは厳しそうだ」と落胆した。「スノーアクティビティを楽しみにしている人にとっては、難しい年になるかもしれない」とみる。
一方で、天然の降雪に恵まれている地域もあった。福井県勝山市の「スキージャム勝山」では、天然の雪に恵まれ、12月16日にオープンする。同スキー場は例年、12月から1月くらいまで人工降雪機を使うが、1月から2月は天然の降雪も多く雪が足りない事態にはならないのだという。
北陸以西の日本海側が平年よりも雪が少なく
ちなみに、今年の暖冬傾向は「エルニーニョ現象」とも関係があるらしい。
エルニーニョ現象とは、(南米沖から日付変更線付近にかけての)太平洋赤道海域における「海面水温」が、平年より高くなる状況が1年ほど続く現象のことだ。エルニーニョ現象が起これば、地球全体の大気の流れが変わるなどして、日本では冬の場合、暖冬になりやすいとされる。
気象庁は2023年12月11日、3か月予報にも関わる、海面水温の様子を伝える「エルニーニョ監視予報」を発表した。気象庁の担当者に話を聞くと、「今後、冬の間にエルニーニョが続く可能性は高く90%となっている」と説明。そのうえで、「北陸以西の日本海側が平年よりも雪が少なくなるのはほぼ間違いないとみている」と話した。