2023年12月28日から24年1月4日にかけて、東海道・山陽新幹線「のぞみ」は全席指定で運行される。ホームの混雑緩和などの狙いがあるという。のぞみは通常、16編成のうち1号車~3号車が自由席となっている。X(旧ツイッター)ではこれに対し賛成の声が上がる一方、料金が割高になるなどとして不満の声も寄せられている。
J-CASTニュースは記事末尾のフォームでアンケートを実施。全席指定化をめぐる賛否や、その理由を自由記述で募集します。
指定席は868席→1118席に
JR東海とJR西日本は9月、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始の3大ピークに「のぞみ」を全席指定で運行することを発表。それがこの年末年始から適用されることとなる。停車駅の多い「ひかり」「こだま」などは通常通り自由席が設けられる。
JRの発表によると、1列車あたりの指定席数が3割近く増える(868席→1118席)。これに加えて、 「お客様には長い間お待ちいただく必要もなくなるとともに、ご乗降もスムーズになり、列車の定時運行にもつながります」 などとメリットを説明している。
Xで見られる賛成意見としては、混雑緩和のほか、座席を譲るよう強制されるなどのトラブルを回避することに期待する声が上がっている。反対意見としては、料金が割高になる、思い立った時にすぐ乗ることができないという声が見られた。
JRの発表では、「3大ピーク期にはこれまで以上に多くの列車、多くのお座席をご用意いたします」ともうたっている。こういった点を念頭に、鉄道ジャーナリストの枝久保達也さんはJ-CASTニュースの取材に対して、車内やホームでの混雑解消の見通しを次のように解説している。
「今年のお盆の『のぞみ』下り自由席の乗車率は最大200パーセントだったようです。新幹線の座席定員は1両あたり100席近くありますので、デッキと通路を合わせてざっと20平方メートルに100人、つまり40センチ四方あたり1人がひしめき合う混雑です(実際には指定席のデッキに誘導するため1両にここまで詰め込みませんが)。ぎゅうぎゅう詰めの車両に乗るのは、座席を確保したとしてもストレスです。
座席を確保するために発車時間のかなり前から並ぶ人も多く、ホームも混雑します。これらの混雑解消は期待出来るでしょう。
なお、『のぞみ』が1時間あたり12本運行し、自由席平均乗車率が150パーセントだったとすると、自由席定員の250人に対して125人の席が不足しますので、12本×125人で1500人の座席が追加で必要です。東海道新幹線は『のぞみ最大12本化』など輸送力増強を進めているので、利用の分散とあわせて概ね吸収できると考えているのではないでしょうか」
Xでは座席トラブルの回避も期待されているようだが、これについては「座席を譲るよう強要するようなトラブルは、乗客全てに座席が割り当てられれば起こりにくくなるのは確かでしょう」とみる。
自由席より割高なのは「確実にピークシフトを促すという狙い」
反対意見で挙げられている料金設定について、年末年始は指定席特急券が通常より最大プラス400円に設定されている。その上、自由席がないため、のぞみに乗るならば割高の指定席特急券を買うしか選択肢がない。枝久保さんは、ピークシフトを促す狙いがあるとみている。
「GW、お盆、年末年始の輸送ラッシュは、休日分散化が進まない日本特有の光景です。通勤電車もそうですが、ピーク日、時間に輸送が集中しすぎると、その期間で使うためだけの車両などを用意せねばならず、非常に非効率なので、JR各社は需要の分散を図るための弾力的な運賃制度の導入を求めています。
そこで従来、特急料金を『繁忙期』『通常期』『閑散期』に分けていたのを、2022年からGW・お盆・年末年始の特に混雑する日に限り『最繁忙期』として、自由席特急券との価格差を930円に設定しています。この状況で自由席があると、安く乗りたい人のインセンティブが逆に増すため、全席を指定席とし、(「『最繁忙期』以外の期間に」)確実にピークシフトを促すという狙いがあるのだと思います」
反対意見として「思い立ったときに乗ることができない」という声もある。人気の時間帯はすぐに満席になることは予想されるが、枝久保さんは「全ての時間帯の全席が埋まるということはあり得ないでしょう」と予測している。
「東海道新幹線の普通車は約1100席。運行本数は最大471本(お盆実績)なので、こだま・ひかり合わせて1日当たり51.8万分の座席が提供可能です。今年のお盆は8月10日から17日まで8日間で上下約270万人、1日平均33.7万人が利用していますから、(ラッシュの方向の偏りはあるでしょうが)全ての時間帯の全席が埋まるということはあり得ないでしょう」