コロナで苦しんだ企業が「経営のプロ」を頼らない皮肉
――しかし、いくら成長業界とはいえ、市場規模のパイには限りがあるでしょう。専門的知識を生かして参入してもうまくいくのでしょうか。
後藤さん そのとおりです。コロナの直撃が業界に大変化をもたらしました。コンサル会社は基本的に企業からの依頼が中心です。コロナ禍によって多くの中小・零細企業が経営悪化に苦しみましたが、皮肉なことに、そうした企業はコンサル会社に相談に行かず、政府や自治体の各種支援制度に依存する道を選んだのです。
つまり、コロナの大波の中で、本来なら企業が苦境に直面し、依頼が増えるはずの時期に、多くのコンサル会社が受注を失い、売り上げが激減する羽目になったわけです。その過程で二極化が進みました。
たとえば、マーケティングに特化していた会社は、企業の販売活動そのものが激減したため市場調査の仕事がこなくなります。イベント企画、プロデュースに特化した会社も、自粛で人を集めることができません。一方、在宅ワークやオンライン事業が増えたため、IT技術やDXが得意な会社は売り上げを大きく伸ばしました。
――経営悪化する企業が増える時期に、逆に企業を救うはずの「経営のプロ」がバタバタ倒れるのは、確かに皮肉な事態ですね。
後藤さん どうも世界経済が大変化する時期には、コンサル業界には同じことが起きるようです。【図表】の倒産の推移グラフを見てください。2008年と2009年に前回のピークが来ていますが、これは2008年9月、米国の有力投資銀行のリーマンブラザーズが破綻し、世界的な株価下落、金融危機、同時不況につながった「リーマンショック」の時期と重なります。
今回もコロナが引き金ですが、倒産116件の主要原因の8割は「販売不振による売上減」です。企業に販売促進策やコスト削減策をアドバイスする「経営のプロ」としては、一番恥ずかしい原因と言えるでしょう。