やる気のない部下に囲まれ苦悩する上司 ぶれずに向き合い続けた末に若手の心が動いた【専門家が解説】

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声高に説き続けるだけでも、人はついてこない

   このエピソードから学べることを、2つ挙げましょう。

   1つは、Eさんが途中で諦めることなく、信念をもって根気よく部下たちと向き合い続けたことです。

   今日、経営やリーダーシップのあるべき姿として、組織のパーパスやビジョンを明示する重要性があらためて説かれています。チームの仕事を再定義し、メンバーと共有する姿勢は大切です。しかし、単にメッセージを掲げれば人や組織がそれだけで追随し、変わるわけではありません。

   上司が理想を説いても、部下にもさまざまな思いや現実の壁があります。また、組織内には抵抗勢力もいるものです。上司が反論や抵抗に揺らぎ、ぶれてしまっては、かえって信頼関係が揺らぎかねません。かといって、声高に説き続けるだけでも、人はついてきません。

   Eさんは、チーム全体に呼びかけながら、各メンバーとの対話も根気よく続けたといいます。その人にとって仕事の意義は何か、本人の希望に沿って具体的に考え合おうと努めました。その結果、若手部下にはEさんの本気度がしっかり伝わり、心を動かしたといえるでしょう。

   「3.5%ルール」をご存じでしょうか? ハーバード大学の政治学者、エリカ・チェノウェス氏が発見した法則とされます。同氏が20世紀のさまざまな革命や運動を調査したところ、人口の3.5%以上が関与する行動は、必ず何らかの変化を生んでいるというものです。30人のチームでいえば、まず1人を変えることです。

   また、私がよくたとえるのがオセロです。初めは黒一色に近かった盤上のコマを白く変えるには、四隅を押さえること。すなわち、キーマンを変えることで、組織全体を変える力が生まれるのです。

   Eさんの例では、普段は大人しい若手部下の変化が共感を呼び、ベテラン社員をも動かしました。必ずしも声の大きい人やリーダーに限らず、誰がキーマンかを見定めていく視点も大切です。

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