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客が支払わなかった売掛金、ホストが肩代わりする義務ある? 「返済のため特殊詐欺」事件も...弁護士の見解は

   女性が高額な飲食代を請求されることで多額の売掛金を背負い、その返済のために売春や風俗店勤務を強いられる「悪質ホスト問題」が2023年11月、国会で取り上げられた。売掛は、いわゆるツケ払いのことを指す。

   売掛は客にとって様々な問題を孕んでいるが、一方で客の未払いの売掛金を肩代わりした元ホストの男が特殊詐欺に関与して逮捕される事件も起きた。客が支払わなかった売掛金をホストが肩代わりする義務はあるのだろうか。J-CASTニュースは、弁護士に見解を聞いた。

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ホストクラブの売掛などは「社会問題」と訴え

   若い女性を風俗店勤務などに追い込む「悪質ホスト」問題が11月9日、参議院の内閣委員会で取り上げられた。立憲民主党の塩村あやか参院議員は、ホストクラブの売掛などを「社会問題」と訴えた。

   20日には衆院本会議で立憲民主党の鎌田さゆり議員が、客の支払い能力を超えた売掛金債務を負わせ、その返済のために風俗での勤務や売春を強要する点が悪質だと指摘した。

   これらは客側に関する問題だが、一方で22日の複数メディアの報道によると、客の売掛金を肩代わりし、返済のために特殊詐欺に関与した元ホストの男が窃盗容疑で逮捕される事件があった。

   客が売掛金を支払わなかった場合、ホストは売掛金を肩代わりする義務があるのだろうか。29日、J-CASTニュースの取材に応じた弁護士法人・響の古藤由佳弁護士は、まず客による売掛金支払いの消滅時効について次のように解説する。

「ホストクラブの売掛金は飲食店の飲食料です。したがって、令和2年4月1日の民法改正以前の取引は、短期1年で時効消滅します(改正前民法174条4号)。しかし、民法改正後の取引については、短期消滅時効の規定が削除されたため、飲食店における飲食料についても、消滅時効期間は5年となりました」(古藤弁護士、以下同)

両当事者が合意していれば「未回収の売掛金を肩代わりする義務を負うことになります」

   古藤弁護士によると、一般的にホストは店舗に雇用されているのではなく、個人事業主として業務委託契約が結ばれており、雇用契約と比較すると、自由度の高い契約内容になっている。この契約で、未回収の売掛金に関する取り扱いも規定されているはずだという。

「未回収の売掛金をホストに肩代わりさせる報酬体系をとることについて両当事者が合意したのであれば、ホストはその内容に拘束され、未回収の売掛金を肩代わりする義務を負うことになります」

   業務委託契約については、書面やその他一定の方式で意思表示をする「要式性」をとらず、口頭で業務委託の内容について合意がなされれば契約を締結したことになるという。古藤弁護士は「したがって、契約なく業務にあたるホストは基本的にいないのではないかと思います」との見解を示す。

   客が支払わなかった売掛金を、店舗側がホストに肩代わりさせるのは違法ではないのだろうか。古藤弁護士は「業務委託契約の場合、当事者間が合意したのであれば、未回収の売掛金を実質的にホストに肩代わりさせる報酬体系をとることは可能」としている。