忘年会シーズンが始まる時期だが、大人数が集まる際の人気メニュー2つの専門店が苦境に陥っている。焼き肉と唐揚げだ。2023年、倒産が相次いだ。
焼き肉店と唐揚げ屋は、コロナ禍の際は売り上げを伸ばした「優等生」だった。テイクアウトの唐揚げ店をあちこちで目にした人もいるだろう。2つを苦しめている要因に迫った。
焼き肉店の倒産は前年同期比3倍
帝国データバンクは2023年9月7日、焼き肉店の倒産動向を発表した。「コロナ禍の外食産業で『勝ち組』とされた焼肉店で倒産が急増している」と報道。同年1~8月に16件が倒産し、「22年の同期間に比べ約3倍に達した」と伝えた。この期間の累計としては、過去10年間で最多ペースという。
原因は、次のように説明した。
「輸送コストの増加や円安の影響により、安価な米国や豪州産などの輸入牛肉価格が高騰したほか、電気・ガス代、アルバイトといった人件費など運営コストの上昇も重なった」
焼き肉店はコロナ禍の最中、排気ダクトによる換気が頻繁に行われるため、「コロナ対策上安全」と評価された。当時の報道を振り返ると、「飲食店苦境の裏で焼肉店は絶好調 コロナ禍での強みは『換気の良さ』」とのタイトルで、AERAが2020年12月14日号で報じていた。
唐揚げ店の多くは小規模事業者
帝国データバンクは、唐揚げ店の苦境も報告している。2023年7月9日、唐揚げ店の倒産発生状況について、持ち帰りを中心に運営企業の倒産が1~6月に9件判明したと伝えた。それまで最多だった21年(6件)を上回り、「過去最多を更新した」とのこと。
「唐揚げ店の多くは1~2店を展開する小規模な事業者で、水面下の廃業や閉店を含めれば、実際はより多くの唐揚げ店が淘汰されたとみられる」
と推測していた。
唐揚げ店に関しては、やはり、コロナの警戒中にテイクアウトの需要が膨らんだことが思い出される。帝国データバンクも、「コロナ禍で急拡大した『中食』需要のなかで、冷めても味が落ちにくく、自宅での調理が敬遠されがちな唐揚げが、手軽な持ち帰り総菜として人気を集めた」と指摘。そのうえで、昨今の低迷の理由のひとつとして、
「輸入鶏肉や食用油など原材料価格も急騰。強みだった『原価の安さ』が生かせず、仕入原価の上昇に耐え切れずに経営破綻したケースも見られた」
と、分析した。
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)