企業は今こそ「若者の孤独」と本気で向き合おう 会社も社員も幸せになれる一歩は「たわいもない雑談」から

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新入社員と役員が「家族」になるコーセーの取り組み

――ところで、日本国内ではどんな企業が、若者の孤独対策に力を入れていますか。

坂田さん 化粧品製造、販売のコーセー(東京都中央区)が、「セカンドホーム計画」として、年齢や職種が異なる社員5人ほどで「疑似家族」を作るという、ユニークな試みを2022年秋から行なっております。

コーセーの広報担当者に話を聞かせてもらったのですが、ベテランと若手、あるいは、入社1年目の社員と執行役員が「家族」になり、オンラインで月に1回、会話の機会を持つのです。仕事の話はほぼなし。「この間の休みは何をしていたの?」とか「初詣はどこに行ったの?」といった気楽な話題が中心です。

若手社員からは「自分の応援者が増えたような気がする」、ベテラン勢からも「若い人が何を考えているかつかめず、どう接したらよいかわからなかったけど、いいきっかけになります」という声が聞かれて、好評だったようです。

この「疑似家族」の注目すべき点は、マネジメント層ではなく、新入社員のアイデアをしっかり形にしたことです。新人研修の一環として、社内コミュニケーションを活発にする企画を考案してもらい、そこから生まれた企画を全社で採用・実践するという点が、「若者が欲していることは、若者に聞け!」の好例だと思います。

――そもそも、役員がいるフロアと新入社員がいるフロアが違うところが多いく、接する機会はほとんどありませんから、画期的な取り組みですね。ところで、海外ではどんな例があるのですか。

坂田さん 英国のチューリッヒ保険の慈善部門「Zurich Community Trust(ZCT)」が行っている「テレフォン・フレンドシップ・プログラム」という電話ボランティア活動があります。19の企業パートナーが参加して、普段企業に勤める450人以上の従業員が、日常の業務の傍ら、孤独な高齢者に電話をするのです。

従業員と高齢者は、音楽やスポーツといった共通の趣味等を元にマッチングをされており、継続的にペアを組みます。会社の方針もあって引き受けた従業員からすれば、「会ったこともない目上の人と話すなんて、面倒くさいな」と思うこともあるでしょう。しかし、孤独に悩む高齢者と話すことによって、逆に従業員自身が救われている面もあるのです。

また、従業員が「自分は人の役に立っている」という充実感を本業とは別の場所でも得られて、それが結果的に仕事に対する満足感向上にもつながっているそうです。
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