「デジタル地域通貨」花盛り 「満足度8割、使うとお得」なのに利用経験は2割、今後の課題は?

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   地域経済を活性化しようと全国で導入が進む「デジタル地域通貨」だが、どのくらいの人が利用しているのだろうか。

   モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2023年11月22日に発表した「デジタル地域通貨に関する調査」によると、利用経験のある人は約2割、また知っている人が約5割だった。

   しかし、利用経験者の満足度は約8割と高い。デジタル地域通貨は今後浸透するのか。調査担当者に聞いた。

  • 地元の店でデジタル地域通貨を使って買い物(写真はイメージ)
    地元の店でデジタル地域通貨を使って買い物(写真はイメージ)
  • (図表1)デジタル地域通貨の認知~利用状況(MMD研究所の作成)
    (図表1)デジタル地域通貨の認知~利用状況(MMD研究所の作成)
  • (図表2)年代別のデジタル地域通貨の認知~利用状況(MMD研究所の作成)
    (図表2)年代別のデジタル地域通貨の認知~利用状況(MMD研究所の作成)
  • (図表3)デジタル地域通貨の利用で買い物が増えたか(MMD研究所の作成)
    (図表3)デジタル地域通貨の利用で買い物が増えたか(MMD研究所の作成)
  • (図表4)デジタル地域通貨の満足度(MMD研究所の作成)
    (図表4)デジタル地域通貨の満足度(MMD研究所の作成)
  • 地元の店でデジタル地域通貨を使って買い物(写真はイメージ)
  • (図表1)デジタル地域通貨の認知~利用状況(MMD研究所の作成)
  • (図表2)年代別のデジタル地域通貨の認知~利用状況(MMD研究所の作成)
  • (図表3)デジタル地域通貨の利用で買い物が増えたか(MMD研究所の作成)
  • (図表4)デジタル地域通貨の満足度(MMD研究所の作成)

買い物からウォーキング、さまざまなポイント給付

   デジタル地域通貨は、自治体や地元の金融機関、商店街などが特定の地域内でのみ使える決済手段として運営するもので、主にスマホなどの専用アプリを取得して使う。地元の商店街などで購入すると、入金(チャージ)や決済時に一定のポイント還元を受けられる仕組みが多い。

   また、自治体が、「1日8000歩」といった住民の積極的な健康増進の取り組みにポイントを給付するケースも少なくない。

   今年(2023年)10月、東京の八王子市、国立市、東村山市の3市が相次いで導入を発表して話題になった。先行事例では、埼玉県深谷市の「negi(ネギー)」、静岡県御殿場市の「富士山Gコイン」、東京都世田谷区商店街振興組合連合会の「せたがやPay」、飛騨信用組合の岐阜県高山市・飛騨市・白川村3市村での「さるぼぼコイン」などが知られている。

   MMD研究所の調査(2023年10月24日~10月30日)は、全国の18歳~69歳の男女8000人が対象だ。まず、デジタル地域通貨を知っているかを聞くと、「現在利用している」~「名称は知っているが、どんな内容なのか知らない」までを合わせた認知は55.0%となった。

   また、「現在利用している」と「過去利用したことがある(現在は利用していない)」を合わせた利用経験は17.5%となった【図表1】。これを年代別にみると、利用経験は20代(29.3%)が最も高く、次いで30代(21.8%)、40代(15.6%)と、若い世代ほど利用経験が多くなった【図表2】。

   デジタル地域通貨の利用経験者に、買い物の頻度が増えたかどうかを聞くと、64.5%の人が「増えた」と答えた【図表3】。利用した場所の上位には「食品・生活用品」「飲食店」「ドラッグストア」「家電量販店」「美容院・サロン」などが並んだ。商店街など地域経済の活性化に役立っているわけだ。

   さらに、利用経験者にデジタル地域通貨の満足度を聞くと、「満足」(31.0%)と「やや満足」(46.5%)を合わせて、「満足」と答えた人は8割近く(77.5%)に達した【図表4】。

地域活性化に一定の効果が得られている

   こうした結果をどう見ればよいのだろうか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者に話を聞いた。

――デジタル地域通貨が花盛りで、よくニュースにも取り上げられますが、認知55.0%、利用経験17.5%という数字をどう見ますか。意外に多いでしょうか、少ないでしょうか。

調査担当者 個人的には少し少ないかと感じましたが、「デジタル地域通貨」という言葉になじみがなかったり、それぞれの地域で特色のあるサービス名を付けて展開していたりするので、デジタル地域通貨として認識していなかったが知っている/使ったことがあるという人もいるのではないかと思います。

神奈川県が実施している「かながわPay」を利用している同僚に聞くと、「CMやメールでの告知があるわけではなく、お店で見かけて知ることがほとんどだから、認知55.0%、利用経験17.5%という数字は、むしろ多いと思った」と話していました。

――なるほど。すると、20代の利用経験が3割以上(35.3%)ということは、今後伸びると予想しますか。

調査担当者 20代の利用経験が多い点に関しては、キャッシュレス決済を日常的に利用している人が多く、新しいサービスにも抵抗がないからだと考えます。今後伸びていく要因にもなると思います。

――ただ、未利用者に「居住地にデジタル地域通貨があった場合、利用するか?」という問いには、「利用したい」という人は18.5%しかいませんね。

一方で、デジタル地域通貨によって買い物頻度が増えた人が64.5%もいるし、利用した人の満足度も77.5%と、非常に高いです。このギャップの大きさをどう理解したらよいのでしょうか。

調査担当者 未利用者の利用意向が2割以下の理由としては、まず、未利用者にはサービスの内容やメリットを理解している人が少ないことが挙げられます。また、キャッシュレス決済の普及で地域通貨もデジタル化してきましたが、デジタル化により使いこなせない方々も出てきている面もあると思います。

反対に、利用後の買い物頻度が増加して、満足度も非常に高いため、利用すればその利便性や還元によるお得感を感じられるサービスであることが分かります。地域活性化に一定の効果が得られているとみています。

利用までの手続きや、決済時の操作性などハードルとなるものを解消し、周知していくことでさらに広めることができると思います。

対象者が増えると、予算とのバランスの問題が

――あなた自身は利用したことはあるのですか。また、特に注目、評価しているデジタル地域通貨がありますか。

調査担当者 私は居住地にサービスがないため、利用したことがありませんが、社内には都市部のサービスを中心に何人か利用者がおります。先ほどの「かながわPay」を利用している同僚は、キャンペーン時に冷蔵庫を買い替えて、「限度額に近いポイントが還元できた」と喜んでいました。

自分が利用するとしたら、やはり還元率や、還元されるポイントなどの形式、受け取れるタイミングなどを重視するかと思います。

――今後、デジタル地域通貨はますます拡大するでしょうか。また、課題や問題点があるとしたら、どこにありますか。

調査担当者 使えばお得に買い物できるサービスですので、利用によるメリットの周知や、利用開始までのハードルを下げることで、拡大の余地があると思います。また、加盟店舗数も利用者にとっては重要な要素です。使える店舗がどれだけ多いかで、今後根付くかどうかに関わってくるのでしょう。

とはいえ、使える場所や対象者を多くして、期間限定で還元率が高くするとなると、すぐにキャンペーンが終わってしまうということもあるかと思いますので、予算とのバランスが難しい印象です。

(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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