特定外来生物に指定される小型のシカの仲間である「キョン」が大繁殖しているというニュースに対し、「海外では高級食材とされており、日本でも食べればいい」という旨のX(旧ツイッター)の声が話題になっている。それに対し、「日本のキョンはまずい」と指摘する声もある。実際はどうなのか。J-CASTニュースは2023年11月30日、ジビエ料理や食材を扱う「猟師工房ドライブイン」(千葉県君津市)を運営する原田祐介さんに話を聞いた。
「作っても作っても、すぐに売れてしまう」
発端となった投稿ではキョンを「食べればいい」としているが、実はすでにキョンはジビエとして扱われている。原田さんは5年ほど前からキョンの食肉化に取り組んでいるといい、「猟師工房ドライブイン」でもキョンの肉やキョン肉を使った加工食品を販売している。
キョンの肉について、原田さんは上質な鹿のような味だとし、「私は10年ほどジビエのビジネスを手がけていますが、そうとう美味しいお肉です」とコメント。おすすめの食べ方を尋ねると、「失敗なく美味しくいただくには、コンフィーやアヒージョ。あとは、ローストのような調理方法は間違いないですね」と教えてくれた。
現在、キョン肉は客から「大人気」だという。
「今、(キョンの大繁殖が)非常に議論を呼んでいる状況で(話題になっているので)、お肉は作っても作っても、すぐに売れてしまう状況です」
「いただいた命にちゃんと向き合って供養していこう」
しかし、キョンはもともと日本にいなかった特定外来生物であり、千葉県では2021年に策定された「第2次千葉県キョン防除実施計画」のもと、完全排除を目指し取り組んでいる。食材として一般化させることには問題もある。付加価値がついてしまうと、養殖したり地域に放したりする人が現れる懸念があるという。
「キョンはもともと日本にいなかった生き物で、いてはいけない生き物です。これを全滅させないといけないというのは、県庁などと全く同じ見解です。(食材としての価値など)2次的な価値が生まれる懸念はありますが、あくまでもいただいた命なので、美味しく食べたり、皮を利用したりして、供養してあげられたらいいなという思いだけでやっています。キョンに関する我々の取り組みとしては、キョンの殲滅が終わったら、一切終わるという考え方です。でも、殲滅が終わるまでの間は、いただいた命にちゃんと向き合って供養していこうというスタンスです」