乗客の「カスハラ」から運転手を守れないバス会社
――賃金以外にバス運転手の成り手が少なくなった理由はありますか。
飯島さん カスハラ(カスタマーハラスメント、悪質なクレーム客)の問題も大きいと思います。バス運転手はたえず乗客のクレームにさらされます。「急発進した。運転が荒い」「前の車と車間距離をとっていない」といった抗議電話が頻繁にバス会社にかかってくるし、SNSでも発信されます。
会社はこうした抗議に弱く、自分たちを守ってくれない、という不満を持っているバス運転手が多いと聞きます。たとえば、今年7月、中部地方のバス会社運転手が運行中の休憩時間にSA(サービスエリア)でカレーを食べていたら、SNSで「バスの運転手がSAでカレーを食べている」と発信され、会社に抗議電話が来ました。
当の運転手が「休憩時間にカレーを食べることも許されないのか。会社は対応してくれなかった」と反論ツイートを行ない、ネットで話題になりました。
――社員を守れないバス会社も情けないですね。
飯島さん 逆にカスハラには断固、対応して運転手を守るバス会社もあります。大阪府の高槻市営バスです。乗客から「バス停をはみ出して停車した」という抗議電話が来ると、ドライブレコーダーの映像から「バス停に駐車していたクルマがあったため、よけて停まりました」と説明。「着席しないと転倒すると、強圧的に言われた」という抗議電話が来ると、バス車内の映像と音声の記録から「バスが揺れ動く道路だったため、丁寧にお願いしました」と反論。
しかも、こうしたクレームに対する対応を、ドラレコの映像とともにウェブサイト上の「お客様の声」コーナーに公開しているのです。
――すべてのバス会社が「お客様は神様」と思い込んでいる一部の客から、運転手を守ってくれるといいのですが。
飯島さん 賃金の低さに加え、社員を守れない会社の環境、そして最近の物価高が、運転手たちに「もうやってられない!」という気持ちにさせているのだと思います。