橋下徹・元大阪市長の「給与カット」が元凶の1つに
これからのバス路線は、いったいどうなるのか。J-CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。
――運転手の人手不足が深刻ですね。やはり、賃金の低さもあるのでしょうか。国土交通省の交通政策白書によると、2022年のバス運転手の年間所得額は平均399万円で、トラック運転手より57万円低く、全産業の平均よりも98万円低い額です。
これでは、他の業界にどんどん人材が流れますよね。
飯島大介さん そのとおりです。特に路線バスの運転手は給与が安いため、現在、コロナ禍が終わり、観光需要が伸びている観光バスの運転手に人手が流れている状態です。観光バスのほうが比較的給与が高いですから。
長年、バス運転手をぞんざいに扱ってきた日本社会のツケが、ここに来て、一気に問題を大きくしている気がします。
――どういうことですか。
飯島さん バス運転手は、ある意味、飛行機のパイロット同様に人の命を預かる重い責任を持っているに、ここ十数年、賃金がコストカットの対象にされてきました。象徴的な出来事が、日本維新の会の橋下徹氏が大阪市長だった2012年、大阪市営バスの運転手の給与を、一挙に4割カットを打ち出したことです。
市営バスの運転手の平均年収が739万円と、民間のバス運転手より高いとして、在阪大手私鉄バスの最低レベルに合わせたのです。当時、大阪市民たちは「市バス運転手、給料800万円なんてありえへん」と、橋下市長に喝采を送ったと聞きます。
しかし、民間も含めてバス運転手の間では、「市バスの運転手の給料が高過ぎるのではない。バス運転手の給料が低すぎるのだ」という声があったのは確かです。その後、この大阪の動きが全国のバス運転手の給与を低く抑える流れのきっかけの1つになった可能性があります。