東京・上野の貴金属店に押し入った男3人組の強盗に対し、さすまたを男らに向けて振り回すなどして男性店員が応戦したことに、X(旧ツイッター)上などで賞賛の声が相次いでいる。
さすまたは、押さえ付けて攻撃から防御する方法が知られるが、今回のように攻撃に使う方が効果的といった声が多い。本当なのか、さすまたメーカーの担当者に話を聞いた。
「豪傑感ある!」「これもう現代の猪八戒だ」とネット沸く
「キャー!」。店内に女性の叫び声が響く中、ヘルメットを被った男が、右手に金属の棒のようなものを持って店内に入る。ガラスが割れる音も響いて、騒然とした空気だ。
すると、同じようにヘルメットを被った男2人が入口に来て合流し、その後ろには、にらみを利かせた恰幅のよい店員の姿が見える。映像が乱れた後、今度は、この店員がさすまたを左肩に乗せて出て来て、うち1人に振り下ろす。この男がひるむと、店員は、他の男らに向けて、さすまたを振り回し、その間に、別の店員が店の前のバイクを倒す。男らが乗って来たらしく、さすまたの店員は、このバイクを目がけて、今度は打撃を2回加えた。
男らが右方向に逃げると、店員はさすまたを右肩に乗せ、男らを追い駆けて行く。
この映像は、テレビ各局が2023年11月26日夜、視聴者提供としてニュースで流した。
警視庁の発表やマスコミ報道によると、26日18時40分ごろに店員から110番通報があった。男3人がバイクで乗り付け、店内に侵入して、バール様のものを使って、ショーケースのガラスを破壊した。商品を奪おうとしたが、30代の男性店員がさすまたで抵抗し、男らは、何も取らずに逃走した。当時、客はおらず、店員らにけがはなかった。上野署では、強盗未遂事件として捜査している。
店員がさすまたで応戦した映像は、X上で大きな話題になり、この店員を讃える声が相次いでいる。
「豪傑感ある!」「これもう現代の猪八戒だ」などと反響を呼び、犯人を押さえ付けて防御するより、振り回して攻撃する方が理にかなっているとの指摘すら出た。
メーカーは複数本を備えるのを推奨
映像で見る店員の応戦ぶりについて、さすまたの専門家は、どのように見ているのだろうか。
教育機関などと取引している、都内のさすまたメーカーでは11月27日、企画部の担当者がJ-CASTニュースの取材にこう答えた。
「さすまたは、それ自体が武器ではありません。相手1人に対して、複数人で胴体や足などを抑え込んで行動を制圧するのが基本になります。振り回したり叩いたりといった使い方は、推奨できません」
さすまたは、複数本を備えるのを推奨しており、複数人で対処する方がより安全だという。
「1対1ですと、さすまたを取られてしまう危険があります。相手がU字の部分を両手で持ってしまうと、手元の1本よりも力が強くなるからです。相手が同じ体格なら、1人では対処できません」
相手が複数いる場合は、複数人でもさすまたに効力があるか疑問だとした。店の入口が1人ずつしか入って来られない構造になっているときなどなら、対処できるかもしれないという。
今回は、体格のいい男性店員だったことが、犯人たちに脅威になったとの見方を示した。
「武術の経験があれば、1対1で対処できるケースがあるかもしれません。それでも、犯人たちが店内に入ってこないように威嚇するならともかく、追いかけ回してしまうのはどうかなと思います。犯人たちが逃げたため、被害がなかったとも考えられます」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
(追記:2023年11月28日11時30分)記事の一部を修正しました。