中古車販売店大手ビッグモーター(BM)による保険金不正請求問題をめぐり、関東財務局は2023年11月24日、BMを含むグループ会社3社について、保険代理店登録を11月30日付で取り消す処分を出した。
保険業法で最も重い処分で、発表では、きわめて厳しい表現が並んでいる。創業者の前社長や前副社長について「会社経営には利益の拡大が最重要であるとの信念及び自己の思うとおりに経営したいという意欲が過剰」で、「大会社であれば当然に整備すべき経営管理態勢の構築を怠った」などと指摘。「適正な保険募集を確保するための体制整備義務を放棄」したともしており、「再建への道筋は極めて困難」だと結論づけている。
7年間で取締役会は1回のみ
BMは引き続き中古車の販売はできるものの、保険の販売はできなくなる。加入が義務づけられている自賠責も別の場所で加入する必要があり、客離れが加速しそうだ。金融庁は9月19日から11月10日にかけてBMに対して立ち入り検査を行っていた。
検査では、極めて短時間で手続きが行われた契約148件を抽出して調べたところ、そのうち8割を超える122件で「網羅的な重要事項の説明を行っていない実態が認められた」。それ以外に、保険契約88件を確認したところ、14件が「店長等から圧力を受け加入させられたなど、不適切な募集行為が行われていた」という。
企業体質、具体的には「会社法が求める機能を発揮しているとは認められない実態」にも言及。例えば、会社法では取締役は3か月に1回以上、業務執行状況を取締会に報告することを求めているが、16年10月~23年7月までの約7年間で、取締役会の開催が確認できたのは20年12月の1回のみ。「会社法等に定める各種の決議も行われていない」とした。
次のように創業家の問題も指摘した。
「前社長・前副社長は、会社経営には利益の拡大が最重要であるとの信念及び自己の思うとおりに経営したいという意欲が過剰であったことから、法令等遵守態勢をはじめ、大会社であれば当然に整備すべき経営管理態勢の構築を怠った。また、社内規程等が存在するにもかかわらず、自らが中心となって策定した『経営計画書』により、社員の行動や実務レベルの業務運営を直接『統制』する経営を進めてきた」
「適正な保険募集を確保するための体制整備義務を放棄」
前副社長が苦情対応コールセンター事業を「コストに見合った利益を生まない事業」だとして廃止したことなどを「適正な保険募集を確保するための体制整備義務を放棄」した、とも指摘した。
発表では、BMのあるべき姿について
「過去の成功体験に基づく利益優先の会社運営やカリスマ的な経営者を前提とした独裁的な個人経営から脱却し、法令等を遵守し、顧客を含めた幅広いステークホルダーの期待に応える会社となるために、経営管理態勢と人材育成を根本から作り直す必要がある」
などと表現しているが、保険会社が出向人員を引き上げたことなどを挙げて
「体制を整備するための保険会社からの支援も期待できず、再建への道筋は極めて困難である」
と突き放した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
本日、関東財務局長から、株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムホールディングス及び株式会社ビーエムハナテンに対して、保険業法第307条第1項第3号の規定に基づき、令和5年11月30日をもって損害保険代理店としての登録を取り消す命令が発出されました。https://t.co/XzLwhiveQr
— 金融庁 (@fsa_JAPAN) November 24, 2023