就職活動で最終選考まで進んだのに、惜しくも落ちてしまった――。就活生にとっては、希望の会社に入れずショックを受けるだけでなく、それまでに費やした時間がムダになり、その後の就活を続ける意欲も失いかねない出来事だ。
企業としても、最終選考段階での採用と不採用には紙一重の違いしかなく、計画人数に合わせるため泣く泣く落とす場合も少なくない。そんな双方のストレスを少しでも減らせるサービスの利用が増えているという。
熱烈なファンがアンチになることを防ぐ効果も
このサービスはABABA(大阪・吹田市)が運営する「お祈りエール」。選考に落ちた人に対し、「今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」の文言とともに送られる「お祈りエール」に、応援の気持ちを添える意味が込められている。
「お祈りエール」に入れるのは、単に応援だけではない。企業は「今後の就職活動も最後まで頑張って」というメッセージとともに、こんな文言を差し込むことができる。
"弊社の最終選考まで進んだ実績をアドバンテージとして、スカウトを受け取ることのできる「ABABA」というサービスがございます。下記の専用リンクよりご登録いただくと、弊社の最終選考まで進んだことが証明され、多くの企業様からスカウトが届きます。リンク先をご覧いただき、必要があればぜひご活用ください。"
リンク先は、ABABAが運営する新卒特化のダイレクトリクルーティングサービスだ。就活生は、最終面接まで進んだ企業名やプロフィール情報などを入力し、最終選考への案内メールのスクリーンショットなどを提出。これが「最終面接まで通過した人」の証明になる。
この情報は契約企業に公開され、興味を抱いた採用担当者は就活生にスカウトメールを送ることができる。これにより、就活生は書類選考や面接が免除された状態で、平均25通のスカウトを受け取ることができるという。
大手企業の場合、数百人から千人におよぶ新卒採用を行う一方、最終選考で落ちる人の数が数百人にのぼる場合もある。最終選考まで進んだ実績が認められるサービスの案内は、選考に落ちた人のショックや悔しさを和らげ、熱烈なファンがアンチになることを防ぐ効果も期待できる。
また、就活後半時期に内定辞退が生じて採用計画が未達になるおそれが出たときに、他の企業で最終選考まで進んだ人材を自社の選考プロセスに取り込むことは、企業にとってまったくのゼロベースで探すよりも効率的だ。
就活中に「死にたい」と考えた学生は3割
「お祈りメール」が就活生に与えるショックは大きい。ABABAが運営する「ABABA総研」が2024年卒業予定の学生100人に実施した調査によると、就活中に「うつっぽい」と思ったことがある学生は54%にのぼり、「死にたい」と考えたことがある人も30%いたという。
就活がつらかった理由で最も多かったのは「選考に落ちた、または選考落ちが続いたから」が65%で、2位以下を大きく引き離している。
深刻な人手不足により、内定率は3年連続で前年を上回っていると報道されているが、そんな中でも、内定がなかなか得られずに焦る学生や、内定が得られたとしても当初希望していた会社の選考に落ち続けた人も一定数いるはずだ。
創業3期目のABABAは、総企業ユーザー数が1000社を超え、総学生ユーザー数は3万人に達している。直近1年で企業数は1.5倍以上、学生数は2倍以上の伸びだ。契約企業には、NTTドコモやミクシィ、freeeやラクスル、ベクトルなど有名企業の名前が並ぶ。
契約形態には「初期費用30万円(税別)」を支払うPlanAと、初期費用なしで採用の「成果報酬65万円(税別)」を支払うPlanBがある。採用側にならず「お祈りエール」を利用するだけの企業もあるが、それだけ選考に落ちた人への通知に気を使う企業が増えているということだろう。