退職者の開き直りは「合理的」
日本の企業社会では機会主義的な行動をすると「村八分」や出世に関わるなどペナルティが大きく、皆が協調的にふるまうという。有給についても「全部消化をしないのが、あるべき姿」という社会的規範に縛られる。または病気休暇がない代わりに残すケースもある。
しかし、一度限りの関係であれば、お互いに自分の得を考えようとする気持ちが働く。メンバーシップ型を念頭に置いた際、退職時は周囲や組織との関係の終点となり、日ごろ有給が取れなくても全消化しようと「開き直る」のは、経済学的に合理的な行動で、それ自体を責めるのは難しいと述べる。
ただ、「人間は思わぬところで関わる時がある」と忠告する。「同僚や企業に悪い印象を持たれてしまった場合に、悪い印象を持つこと自体に問題があるものの、自分にとってのベネフィット(利益)を将来でみすみす逃すことがある」と、今後の可能性を考えた行動も提案した。
先の読者投票では、「退職に際して、社内で有給休暇の全消化を抑制するような圧力を受けた人」に、相手を尋ねる項目も設けていた。478票時点で集計し、結果は「上司」48%、「社長」19%、「人事・総務」19%、「そのほか」14%。コメント欄では「同僚」の声も挙がった。
メンバーシップ型の社会的規範が、労働者の権利であるにもかかわらず退職者を責めるという「おかしい」矛盾を醸成した形だという。ただ視点を変えれば、「圧力をかけてちょっとでも働いてくれれば、上司にとっても、働かないよりはプラス」「上司は上司ですごく合理的な行動をしている」とも説明できる。
鶴氏は、そもそも退職時に有給全消化という話が起こる自体、「計画的な消化を実現できてない」と使用者側の落ち度を問題視している。