子育ては罰ではなくボーナスとなる
末冨氏は前述の著書で、日本社会は大人が子どもに優しくできなくなっていると指摘。当たり前のように子どもに厳しい態度をとる社会が「子育て罰」を支えているという。
そこで子育てが罰ではなくボーナスとなり、社会が応援してくれる「チャイルドボーナス」という概念を紹介。社会の空気だけでなく、具体的な所得の再分配で補償し応援することで、親子が前向きな気持ちを持つようになるという。「子どもたちに対して『この社会に生まれてきてくれてありがとう』という気持ちを、少しずつでいいから、みんなに持ってほしいんです。その気持ちが子どもと親へのチャイルドボーナスになる」とした。ただ、日本では子育て罰をなくすことから始めるべきと提唱した。
ベビーカーを蹴るような人は、子どもに対して「この社会に生まれてきてくれてありがとう」とはならないだろうと推測。結局は「子どもにお金がかかること」「それを親が担わなきゃいけないこと」が子ども嫌いを社会に蔓延させている原因で、「子どもを産み育てることが楽しい社会ではなくなっている」と指摘する。子育てを辛いものではないと思わせる社会にするためには、教育の無償化などが重要だとした。
電車で赤ちゃんの泣き声に怒鳴る高齢者についてどう考えるか。末冨氏は次のように述べる。
「子育てしてない高齢男性が、赤ちゃんや若いママをターゲットにする典型的な赤ちゃんハラスメントだと感じました。ただし、最も弱く守られるべき存在の赤ちゃんに怒りのはけ口を向けなければならない高齢男性も、良い状況にはないだろうことも心配です。しかし、たくさんの方が、赤ちゃんとママ・パパを守ろうとしてくださり、日本も捨てたものではないなとあたたかい気持ちになりました」
自身も子育ての経験がある末冨氏。子どもが小さかった頃は、怒られた経験はないが、わざとベビーカーにぶつかられ怒鳴られた経験はあるという。
「泣いてもまわりの人はあたたかくスルーくださるか、『赤ちゃんは泣くのが仕事よ』など励ましてくださる方もいました。若い男性2人組が、泣いていても『赤ちゃんかわいい』と声をかけてくださったことも忘れられません」
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