有給消化率の低い日本、雇用システムの問題も
日本における有給取得率の低さは、古藤弁護士も言及した。
19年の労働法改正により、使用者は「10日以上の有給休暇を有しており、かつ年5日の有給を取得していない労働者」に対し、有休付与日から1年以内に時季を指定したうえで5日に足りていない日数を取得させなければならなくなった。その成果もあって22年に過去最高となったものの「それでも58.3%」だという。
鶴氏は、日本の有給消化率を上げるには時季指定権の日数を増やす方法が「一番手っ取り早い」と唱える。グローバルスタンダードに追いついていない一方、背景には「雇用システムの問題」も大きく関係していると述べた。
「将来あるべき姿は、退職時にこういった問題が発生するのではなく、上司も部下も積極的に日ごろから有給の消化に努める働き方や考え方に変えていくのが理想です。それには、色々な条件が変わっていかないといけない」
【予告】後編では、日本で有給消化が進まない問題について、鶴氏が「ジョブ型」「メンバーシップ型」という雇用システムの概念を用いて解決策を詳述します。11月26日10時の公開を予定しています。
古藤由佳さん プロフィール
ことう・ゆか 明治大学法科大学院修了。「弁護士法人・響」所属の弁護士。第二東京弁護士会所属。「難しい法律の世界をやさしく、わかりやすく」をモットーに、消費者トラブルや借金・交通事故・離婚・相続・労働問題など民事案件を主に扱う。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などテレビ・新聞・雑誌等メディア出演も多数。
鶴光太郎さん プロフィール
つる・こうたろう オックスフォード大学大学院経済学研究科で博士号を取得。慶應義塾大学大学院商学研究科・教授。専門は比較制度分析、組織と制度の経済学、雇用システム。「日本の会社のための人事の経済学」(日本経済新聞出版)など著書多数。