「リモートワーク認める会社は成長性が高い」本当か 意思決定の遅さ、一体感の欠如指摘する有名経営者も

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   「働く場所に柔軟性のある企業は、成長性が高い」。そんなレポートが米国で公表されたと日経新聞などが報じている。リモートワークのコンサルティング会社スクープ・テクノロジーが、ボストン・コンサルティング・グループと共同で実施した調査に基づくものだ。

   米上場企業554社を対象に、勤務場所の方針と業績の関係を調べたところ、完全なリモートワークを含めた「柔軟な働き方」を認める企業の売上高は、2020年から2年間で年平均21%に達したという。コロナ禍の反動とはいえ、高い成長率だ。

  • コロナ禍で進んだリモートワーク
    コロナ禍で進んだリモートワーク
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「地域の制約なく人材を調達できる」のは確かだが

   一方、出社義務を設けている企業の伸びは、5%にとどまった。さらに、このうちリモートワークを全く認めない企業の成長率は同3%と低く、リモートワークと出社を組み合わせた「ハイブリッドモデル」の企業の成長率は同6%だった。

   リモートワークと業績との間には相関関係があるようだが、因果関係はあるのだろうか。調査元スクープの最高経営責任者(CEO)兼共同創設者であるロブ・サドウ氏は、リモ―ワークによって「従業員の満足度を高められ、定着率を上げる」ほか、「地域の制約なく必要な人材を迅速に調達できることが、高成長につながっている」と分析する。

   ただしこの点については、成長率が業界に依存しているという見方もある。同調査で、柔軟性が最も高いのは「テクノロジー」で97%。次いで「メディア&エンターテイメント」が92%、「保険」が91%、「プロフェッショナルサービス」と「金融業務」がそれぞれ87%と続く。

   一方、柔軟性が最も低いのは「レストラン&フードサービス」で70%。次いで「ホスピタリティ(人的接客サービス)」が56%、「教育」が54%、「小売&アパレル」が49%、「製造と物流」が48%と続く。

   前者の仕事群は、リアルな接触が必ずしも必要ではない仕事が多く、最新サービスを生み出すため成長率は高い。一方、後者の仕事は、人や物とのリアルな接触が不可欠な仕事なのでリモートワークは難しく、伝統的な業種であるため成長率は高くない。

   例えば、同じ保険業界で柔軟性が高い会社と低い会社を比べるのであれば、「経営者の考え方や会社の方針によって成長性が変わる」と言いやすくなるが、異なる業界をまたぐと、ややニュアンスが変わってくるのではないだろうか。

サイバーエージェント藤田社長「自社のカルチャーと相性が悪い」

   この調査が掲載された「フレックスレポート」の冒頭には、「リモートワーカーは本当に生産性があるのか?」という疑問とともに、有名企業の経営者が柔軟な働き方に否定的な見解を持っている例をあげている。

   具体的には、世界有数のグローバル総合金融グループJPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモン氏や、世界最大の資産運用会社ブラックロックCEOのスティーブ・シュワルツマン氏、豪CRコマーシャル・プロパティ・グループCEOのニコール・ダンカン氏らだ。

   ダイモン氏は、リモートワークは「誠実さと意思決定を遅らせる」と発言。

   ダンカン氏も、オフィスに戻りたがらない若手のミレニアル世代やZ世代を「利己的だ」と批判している。

   これらのリーダーが率いる会社は高い成長性を誇っており、少なくとも「働く場所の柔軟性の低いすべての企業は、成長性が低くなる」とも言い切れない。

   日本の会社でも、例えばサイバーエージェントは2020年3月末から完全リモートワークに移行したものの、同年6月より原則をオフィス業務に戻した。

   藤田晋社長は自らのブログで、リモートワークのメリットを認めつつ、「一体感、チームワーク」が損なわれることや「かなり極端に成果主義、個人主義に振らざるを得なく」なることをデメリットにあげ、自社の根本的なカルチャーと相性が悪いと評している。

   一方で、従業員側は「柔軟にリモートワークができると生産性が向上する」と感じている。Owl LabsがGlobal Workplace Analyticsと共同で行った調査では、従業員の62%が「在宅勤務の方が生産性が高い」、52%が「働く場所が選べるのであれば5%超の減給も受け入れる」と答えている。

   フレックスレポートは「この論争に決着をつけるために」ボストン・コンサルティング・グループと共同で調査分析を行ったとするが、結論を出すにはまだ材料が足りないのではないだろうか。

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