採用選考に使われる!「インターンシップ」制度の激変 知らない就活生が多すぎる 

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   「インターンシップ」と呼ばれた就職活動中の企業でのキャリア支援制度が、2025年卒の大学生・大学院生から名称も中身も大きく変わり、一部で企業の採用選考に利用できるようになる。

   そんななか、リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」(東京都千代田区)が2023年11月10日に発表した「【2025年卒 インターンシップ・就職活動準備に関する調査】」によると、制度が変わったことを知っている就活生は約4割しかいないことが明らかになった。

   こんなことで大丈夫か。新制度のもと、どう就活を進めていけばよいか、就職みらい研究所の栗田貴祥所長に聞いた。

  • インターシップでプレゼンする就活生(写真はイメージ)
    インターシップでプレゼンする就活生(写真はイメージ)
  • (図表1)新たなキャリア形成支援取り組みの4類型(就職みらい研究所作成)
    (図表1)新たなキャリア形成支援取り組みの4類型(就職みらい研究所作成)
  • (図表2)4類型が始まったことを知っているか?(就職みらい研究所作成)
    (図表2)4類型が始まったことを知っているか?(就職みらい研究所作成)
  • (図表3)インターシップに参加したいか?(就職みらい研究所作成)
    (図表3)インターシップに参加したいか?(就職みらい研究所作成)
  • 栗田貴祥さん(就職みらい研究所提供)
    栗田貴祥さん(就職みらい研究所提供)
  • インターシップでプレゼンする就活生(写真はイメージ)
  • (図表1)新たなキャリア形成支援取り組みの4類型(就職みらい研究所作成)
  • (図表2)4類型が始まったことを知っているか?(就職みらい研究所作成)
  • (図表3)インターシップに参加したいか?(就職みらい研究所作成)
  • 栗田貴祥さん(就職みらい研究所提供)

「選考に利用される」知っている学生は4割だけ

   就職活動におけるインターンシップのあり方については、2022年6月に文部科学省、厚生労働省、経済産業省が、「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」(三省合意)を改正し、2025年卒の就職活動から「インターンシップ」の定義を次の4つに類型化した【図表1】。

【「インターンシップ」と称さない】(取得した学生情報の採用活動への活用は不可)

(タイプ1)オープン・カンパニー:就業体験なし。個社や業界に関する情報提供・PR。実施日数は単日(半日程度)。
(タイプ2)キャリア教育:就業体験は任意。働くことの理解を深めるための教育。実施日数はプログラムによって異なる。
【「インターンシップ」と称して実施】(取得した学生情報は、3月以降は広報活動に、6月以降は採用選考活動に使用可)

(タイプ3)汎用的能力&専門活用型インターンシップ:就業体験必須。学生にとっては自らの能力を見極め、企業にとっては学生の評価材料を取得。実施日数は汎用的能力が5日間以上、専門活用型が2週間以上。実施期間の半分以上を就業体験に充当。
(タイプ4)高度専門型インターンシップ:就業体験必須。修士課程・博士課程の大学院生が対象。学生にとっては実践力の向上、企業にとっては学生の価値材料の取得。実施日数はジョブ型研究が2か月以上。

   このように企業・業界紹介のものから、キャリア形成に力点を置いたものまで4つに類型化されることになったわけだ。学生にとっては、インターンシップがどこまで採用選考の参考にされるかがあいまいで、不安と混乱のもとだったが、「タイプ1」「タイプ2」は禁じられる一方、「タイプ3」「タイプ4」は採用選考の基準になると、明確に線引きされることになった。

   就職みらい研究所の調査(2023年9月20日~25日)は、2025年3月卒業予定の就職活動中の大学生831人と大学院生305人が対象。まず、インターンシップが4類型化されたことを知っているかどうかを聞くと、「知っている」と答えた学生は43.7%だった【図表2】。

   また、企業の選考活動にも利用される点で、特に重要な「タイプ3」のインターンシップについて、知っているかどうかを聞くと、「知っている」と答えた学生は44.3%だった。

自分の勉強が社会貢献に役立っている現場を見た

   今年9月時点でタイプ3のプログラムに参加した学生は全体の7%だが、こんな体験のコメントが寄せられた。

「企業から与えられたソースコードをひたすらに改良していくプログラミング実習でした。実習担当の社員はあくまで助言程度の補助を行い、良く言えば自主的な取り組みを促して、悪く言えばやや放置気味であったと記憶しています」(大学生・理系女性)

「学校事務での仕事で、主に文化祭準備や掲示板作成、データ入力、生徒対応などを行った」(大学生・文系女性)

「商品の販売を行ったり、フィードバックを毎日受けたりした。修了式ではインターンシップのまとめとして発表を行った」(大学生・文系女性)

「実際にリリースされているアプリの開発タスクの1つを割り振ってもらい、メンターの指導のもと、実装やレビューなどひと通りの実務を実施した」(大学院生・理系男性)

「自分の学んでいることが社会貢献に生かされている現場を見ることができた」(大学生・理系女性)

「職場の雰囲気が肌で感じられる。5日間を通して、社会人と話す時間が多くあり、業務に関することや就職活動についてなど、気軽にさまざまなお話ができ、距離が近く感じた」(大学院生・文系女性)

「自身のスキルで足りていない部分を見つけられた。企業への理解を深められた」(大学院生・理系男性)

「インターンシップ生全員がそれぞれの課題に取り組むなかで、近い空間での実習だったことから教え合い、励まし合い、チーム開発の片鱗を体験できたような気分になれました」(大学院生・理系女性)

選考に利用される「タイプ3」それを意識して参加を

   J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった「就職みらい研究所」の栗田貴祥所長に話を聞いた。

――これまで就職活動で「インターンシップ」と呼ばれていた「インターンシップ等キャリア形成支援プログラム」が、4類型化されたことを「知っている」学生が約43%という数字、どう評価しますか。個人的には「ずいぶん少ないな。就活、大丈夫かな」と不安になりました。

   就職みらい研究所が今年10月26日に発表した調査だと、今年9月時点でプログラムに参加した学生が約85%もいましたが、制度が変わったことを知らないで参加した人が多いということでしょうか。

栗田貴祥さん 4類型化された初年度ということもありますが、43%という数字は、低いと思っています。学生の皆さんのほとんどが、インターンシップ等に参加したり、就活したりすること自体、初めての経験だと思うので、インターンシップ等の考え方が変わった詳細を知らないままに活動していたとしてもやむをえないことかもしれません。

いずれにしろ、認知度としては高くない数字と認識しておりますので、今後、学生の皆さんに、4類型の認知が広まり、その仕組みが理解されることを期待するとともに、我々も、学生の皆さんへの認知・理解に努めていきたいと思います。

――企業が採用選考に利用できるようになった点で、特に重要なタイプ3について知っている人が約44%しかいない点も気がかりですね。

栗田さん タイプ3のインターンシップは、参加学生の情報を企業側は採用活動に活用することが認められ、卒業・修了年次の前年3月以降は広報活動に、卒業・修了年次6月以降は採用選考活動に使用できるようになりました。

たとえば、企業は、タイプ3に参加した学生の評価情報などを6月以降は採用選考活動に活用でき、評価の高い学生については、1次選考を免除するなどの対応をとることが可能となったということです。

特に、志望度の高い企業のタイプ3に参加する学生にとっては、そこでの評価が選考に大きな意味を持ってくるということだと思いますので、学生の皆さんは、参加されるプログラムがタイプ3であるかどうかの事前確認をしておくことをお勧めします。

自分のらしさや強み、得意が生かせる仕事か見極める

――そのタイプ3に「参加したい」という人が約71%もいます。企業が採用選考活動に利用できるうえ、学生にとっても、企業や仕事のことを知る、かなりいい機会であるタイプ3が、これからの就活の焦点になるのでしょうか。

栗田さん タイプ3は、企業側に実施要件として、実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てること、職場の社員が学生を指導し、学生に対しフィードバックを行うこと、などいくつかの要件が求められています。

こうした要件は、その企業や業界のことを深く知り、理解することにとどまらず、その企業・業界と自分がマッチングするのかを考えることができる、非常に貴重な機会だと考えています。ですので、7割を超える学生が参加を希望するという結果にもつながっているのではないかと思います。

ただし、タイプ3を実施する企業にとって、開催するにあたっての負担が大きいため、それほど多くの定員枠を用意することは難しいです。現時点では、すべての学生に開かれた機会にはなりづらいというのが現状だと思います。

――調査では、多くの就活生からタイプ3の内容や、参加した感想が寄せられています。これらを読み、「もっと、こういったところを見るといい」という建設的な批判、アドバイスがありますか。

栗田さん 参加学生の感想として、商品販売や開発設計など具体的な実務について知ることができたとか、社員からの具体的なアドバイスやフィードバックによって、業務に対する自身の適性に気付くことができたといった声が挙がっています。学生にとって、企業・業界理解を深められたり、その企業や業界、職種、業務などとの適性を図ったりする機会になったのだと思います。

感想の中には、「自分が長時間座って働き続けることが苦手であることに気付けた」というものもあり、実際に働く前に、苦手なワークスタイルに気づける機会になったことは非常に大きな収穫になっただろうと思います。

学生の皆さんには、プログラム開催期間を通じ、現場の社員の方の働き方や、思考などを見聞きし、実際の業務を体験することで、自身が望むライフキャリアやワークキャリアにフィットするのかどうか、自分のらしさや強み、得意なことが生かせそうな職場や仕事なのかどうか、などをしっかり見極めていただけたらと思います。

自分を冷静に判断、プログラム参加をキャリアに役立てよう

――となると、就活大学生はタイプ1、2より、タイプ3を就活の中心に据えていくべきですか。今後、どういった点に注意して就活を進めるといいでしょうか。

栗田さん タイプ1、2とタイプ3では、それぞれ開催される目的が違うので、どれに参加すべきは一概には言えません。まだ、自分の志望業界や志望企業が定まらない学生は、タイプ1、2に参加し、業界や企業を広く知ることで、自分に合いそうな業界や企業を見つけるヒントにしていただければと思います。

すでに明確に志望企業が見つかっている学生や、タイプ1、2に参加して志望業界や企業が何となく見えてきた学生の皆さんは、タイプ3に参加し、企業研究を深めたり、自身との相性を見てみたりする場にしていただけたらと思います。

キャリア形成支援に関するプログラムが4類型化されたことで、学生の皆さんにとっては、参加する目的が分かりやすくなりました。今のご自身の状況を鑑みて、どんな目的を達成するために、どのタイプのプログラムに参加するかを事前に検討し、参加することで、ぜひ、今後のキャリアを考えるヒントにしていただければと思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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